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第2節 

2 その他の健康影響調査

(1) 複合大気汚染健康影響調査
 硫黄酸化物による環境汚染が及ぼす地域人口集団への健康影響を疫学的に調査し、汚染の態様と地域人口集団の健康との関連性を把握することなどを目的として、45年度を初年度として5か年間にわたり、千葉県、大阪府及び福岡県においてそれぞれ対象地区およびコントロール地区を選び、健康影響調査及び硫黄酸化物、浮遊粉じん、窒素酸化物等の環境調査を行った。この5か年間の調査結果の統計的取りまとめを52年2月に公表した。
 この結果を要約すると、6つの調査地域の大気汚染の程度に差異があり、経年的に見ると硫黄酸化物、浮遊粉じん及び降下ばいじんは低下傾向を示したが、窒素酸化物についてはこのような傾向はみられなかったこと、6つの調査地域のせき、たんの有症率について差が見られ、経年的に見ると女子については低下傾向が見られたこと、各大気汚染物質とせき、たんの有症率との関連については、いくつかの組合せについては統計学的に有意であったが、大部分の組合せについては有意ではなかったことなどである。
 なお、本調査で得られた調査結果を基に専門的、学問的見地からの解析、評価を専門学者の研究班において現在行っている。
(2) 自動車道沿道住民健康影響調査
 交通の激しい国道あるいは高速自動車道などの沿道周辺に居住する住民に対する自動車騒音及び自動車排出ガスによる健康影響が問題となっている。このため50年度に上記問題が表面化した国道43号線沿いの芦屋市、西宮市の一部地域と川崎市の東名高速道路東京料金所付近の2地区を対象に住民の健康影響に対する大気汚染及び騒音による環境汚染との関係を明らかにするため、川崎市及び兵庫県等の協力を得て健康調査及び環境調査を実施し現在調査結果の集計、解析を行っている。
(3) 大阪国際空港周辺における航空機騒音健康影響調査
 大阪国際空港周辺地域において航空機騒音の健康への影響が問題となっていることにかんがみ、同空港周辺(兵庫県)において聴力、母子健康及び学童体格の調査を実施し、これらに関する航空機騒音による健康影響の実態を疫学的に明らかにするため兵庫県に事業を委託(49年度)して調査を実施し、この調査結果について現在集計、解析を行っている。
 また、同空港周辺地域住民に航空機の排出ガス若しくは騒音との関係で鼻出血が多発しているのではないかという訴えに関して実態を明らかにするため49年度に大阪府及び兵庫県に委託して健康調査、排出ガス調査、騒音調査を実施し、その調査結果を51年12月に公表した。この結果によると、航空機排出ガスを主体とした大気汚染レベルと鼻出血との関係については統計学的には一部相関係数の高いものもあるが疫学的及び臨床医学的検査所見から総合して明らかな関係は見出せなかった。また、大気汚染物質や騒音等の環境汚染因子と鼻出血との関連性の問題については現在の医学的知見から見て未解決の分野として残されている。
(4) 6価クロム化合物含有鉱さいに係る健康影響調査
 50年度に北海道、埼玉県、千葉県、東京都(江戸川区、江東区)、広島県、徳島県において6価クロム化合物含有鉱さい埋立処分地等周辺地域住民について健康影響調査を実施した。これらの調査結果によると、6価クロムによると思われる疾患は見出されなかったと環境庁に報告された。
 これらの調査の中で各地域においてクロムのばく露の程度を知るために尿中クロム濃度の測定を行っているが、クロムの健康影響を評価するため51年において正常人の尿中クロム濃度について調査研究を進めているところであり、環境庁としてはこの結果をも踏まえて各地域で行われた健康調査結果の総合的な集計解析を行なうこととしている。

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