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第2節 

3 窒素酸化物対策

(1) 窒素酸化物対策の動向
 窒素酸化物対策については、過去1年間において相当の進展が見られるとともに、これらの対策の進展及び窒素酸化物の影響に係る新しい知見の収集等を通じて、今後の窒素酸化物対策の方向が次第に固まりつつある。1年間の動きを概括してみる。
 第1は、自動車や固定発生源などにおける防止技術の進展である。
 50年4月以来環境庁に設けられた自動車に係わる窒素酸化物低減技術検討会は53年度における窒素酸化物排出許容限度の目標値(0.25g/km)に対する各社の技術開発状況の詳細を、各システムごとに主たる改良点、現在の排出ガス達成レベル、開発途上残された問題点等を含めて技術評価を行い、その都度技術評価報告書を公表して来たが、51年10月の最終報告書において大部分の国内メーカーにおいて53年度目標を達成する見通しが得られたことを明らかにした。51年12月にはこの技術評価報告に基づいて53年度規制が告示され、世界で最も進んだ排出ガス防止技術を日本の自動車メーカーが開発し、それが規制に移されることとなった。化学的な技術評価と、その結果の公表が国内自動車メーカーの競争を刺激し、しかも結果的には排出ガスの浄化のみならず燃費の面においても大半は劣化を克服し、なかには向上したものすら現れるに至った。ジーゼル車や重量トラック等については中央公害対策審議会でその長期目標としての排出ガス低減目標値を設定するための技術的検討が行われているが、取りあえずジーゼル車、重量ガソリン・LPG車について52年度に現在よりも窒素酸化物を約15%削減するための告示が同時に行われた。
 固定発生源に係わる窒素酸化物の低減技術の進展についても、50年度に引き続いて51年度においても、関連メーカー及びユーザーから技術開発の状況を聴取して、専門家による技術評価を行ってきた。それによれば、焼結炉排ガス、ガラス溶融炉排ガス等の極めてダーティな排ガス対策を除けば、重油燃焼排ガス程度の脱硝技術については実用化の域に達しつつある。また、そのコストについても設備費については、50年度のヒアリング時点比べて技術が向上し装置の設計が適切に行われるようになったこと等に伴い、かなり明確に低減の傾向が見られている。また、低NOX燃焼技術にもかなりの進歩が見られている。52年度早々に、この防止技術の進展についての評価結果等に基づいて、当面実行可能な最善の排出規制基準を強化することとしている。一方、早期導入が望まれていた総量規制については、その基幹となるニ酸化窒素の汚染予測手法の解明を49年度から窒素酸化物許容総量算定方式検討委員会において検討していたところであるが、51年11月、それまでの検討結果がとりまとめられ、NOからNO2への転換を組み込まない窒素酸化物(NO+NO2)の汚染予測手法については、かなりの知見が得られてきている。このほか、窒素酸化物に関する汚染予測手法については各方面で検討が進められた。
 第2は、二酸化窒素の環境基準の化学的な基礎となる判定条件に新たな知見が加えられたことである。
 51年8月、東京においてWHOの専門家会議が開催され、公衆衛生上の見地からニ酸化窒素の人体影響問題が論議された。この会議の結果の正式発表は今年秋以降を待たねばならないが、会議においては、短期間暴露による健康影響の閾値として二酸化窒素0.5ppmのレベルで合意がなされた。また、二酸化窒素の短期ピーク汚染の繰り返し暴露による影響を予防する条件として最小の安全係数3〜5を見込んで1時間値0.10ppm〜0.17ppm以上の汚染が月に1度を超えて出現してはならず、また他の汚染物質の共存やより感受性の高い人口集団を考慮した場合、より厳しい値を採用することが必要であろうとされた。このWHO専門家会議の結論は二酸化窒素の単独暴露による短期影響を防止するための公衆衛生上の安全率を見込んだ上での許容レベルと解釈されるが、1時間値0.10ppm及び0.17ppmに対応する日平均値の年間98%値を見ると、48年度から50年度までの3か年にわたる全国延べ1,114局の測定データからは、平均的にはそれぞれ、0.04ppm、0.07ppmよりやや低い数値となっている。しかし、この対応関係は、測定局毎に異なっており、必ずしも一義的に決まるものではなく、日平均値の年間98%値が0.02ppmを満たしている測定局においても1時間値0.10ppm以上の濃度が出現している場合もあり、また、日平均値の年間98%値がおおむね0.06ppmを超える測定局においては、すべて1時間値0.10ppmを超える濃度が出現している。ちなみに50年度において、WHOの示した指針の下限である0.10ppmを満足している測定局は、全測定局の57%程度であった。
 なお、WHOの専門家会議では長期間暴露による生物医学的影響は、いまだ公衆の健康の保護という観点から勧告するに足るほど解明されていないものと考え、長期間平均値としての最小レベルについての議論を進めなかった。しかしながら、WHOの専門家会議では日本の環境基準設定の基礎として採用した動物実験の成績と意義が国際的に確認されるに至ったものである。
 6都市における45年度から49年度までの5年間にわたる複合大気汚染健康影響調査結果は52年2月に公表された。その内容は、WHOの専門家会議のいう定性的な知見にとどまるものであるが、公表された結果は、大気保全という立場からの汚染の悪化と好ましからざる健康影響を予防するという窒素酸化物対策にとって、従来の限られた疫学的な知見に対して新しい知見を加えたものである。
 そのため、更に専門家によってより詳細な解析評価が行われているところであるが、二酸化窒素の年平均値とBMRCによる持続性せき・たんの有症率との間に49年度には統計的に有意の相関が見られたことや、巨視的に見てこの5年間の汚染の動向の範囲内では、ばいじんと硫黄酸化物の汚染が改善されれば、二酸化窒素の汚染が横ばいか若干上昇ぎみであっても、有症率は改善の傾向を示すものと思われること等が注目される。
 第3は、OECDの環境委員会による日本の環境政策分析会議において、我が国の政策が議論され、その結果や問題点について評価が行われたことである。
 同会議において、我が国が重大な健康被害まで生じた40年代前半からのはなはだしい公害を防除するために、社会的な危機ともいえる情勢の中にあって、汚染による健康被害に係わる化学的なデータや、防止の費用とその経済的影響についてのデータが完全に得られるものを持たないで、長期目標として厳しい二酸化窒素等の環境基準を設定して、規制に努力したことが世界の最先端をいく自動車排出ガス浄化技術等を生み出すインセンティブとなったとして高く評価された。
 しかし著しい汚染を克服した後の今後の対策の進め方については、長期的な最適化された計画で進む方が適切であろうという示唆も述べられている。
(2) 環境基準達成の方向
 環境基準の達成については、48年5月の環境庁告示により、5年以内に維持達成されるよう努めるものとされ、汚染の著しく進行している地域については、年間を通じて環境基準を満たす日数が総日数に対して60%以上維持されるという中間目標を5年以内に達成し、8年以内に環境基準を達成するように努めるものとされている。
 環境庁はこの目標に向けて自動車排出ガス、固定発生源に対し、段階的に可能な限りの規制を行ってきた。
 その結果は年々少しずつ進ちょくしていることは事実であるが、51年度内における努力と検討の結果ではこの当初の努力目標を53年5月までに完全に達成することはほとんどの地点において不可能である。汚染の動向には改善の兆しはあるが大勢は横ばいであり、一部改善、一部増加の傾向にあるが、これは規制の効果もあるが一方低成長下における工場等の稼働率の低下による汚染物質排出の減少も効いていることは否定し得ない。
 現在の汚染状況は大都市地域において極めて高く、排出量と環境濃度の比例関係を仮定すると、第2-2-3図(後出)に示すように東京、横浜や川崎では環境基準を達成するためには90%程度の削減率を必要とし、中間目標を達成するためでも70%程度の削減率が必要なことを示している。現在までの規制による国定発生源からの窒素酸化物排出総量の削減については約20%程度、自動車からの窒素酸化物排出総量の削減は約30%未満ではないかと推定されているので、更に大幅な削減が必要なわけである。
 51年度における固定発生源の窒素酸化物防止技術の評価から見ると窒素酸化物低減効果は、低NOX燃焼技術で20〜70%、排煙脱硝では無触媒方式で40〜50%、触媒方式では90%程度である。
 自動車の53年度規制で乗用車は窒素酸化物を未規制時に対して92%削減することになり、ディーゼル車や重量トラック等の52年度規制で未規制時に対して30〜40%削減となるが、この削減効果が最大限に現れる58年頃においても、交通規制による10%削減を含めても50年度に対し排出総量としては、34%程度の削減にとどまるものと推定される。
 トラックや重量ガソリン・LPG車については、更に長期目標を検討中のためまだ削減の余地があることは明らかであるが、東京、横浜等での中間目標達成のための70%の削減でも非常に努力を要することは明らかである。大都市の二酸化窒素の汚染は低煙源としての群小固定発生施設と自動車が大きなウェイトを占めることも事実であり、群小固定発生源では脱硝技術の導入はあまり期待できないので、90%程度の削減はまず可能性がないと考えられる。
 このように二酸化窒素の環境基準の達成には多くの困難が存在するので、防止技術の水準と発展の可能性、対策の推進に関する社会・経済的要因等を的確に評価した上、窒素酸化物対策に関する段階的な実行計画を策定する必要がある。
 この場合、考慮すべき第1の点は、対策が困難な高汚染地域においても、住民の健康に障害を生じないレベルを第1段階の対策の目標として確保することである。この環境上の条件がどのようなレベルに相当するかは、今後中央公害対策審議会の専門家による検討を待たねばならないが、WHO専門家会議の示す指針は、1つの手掛かりとなろう。
 第2の点は、窒素酸化物が単に1次的な汚染物質であるにとどまらず、光化学大気汚染に関与していることである。これまでの知見によれば光化学大気汚染は、多くの汚染物質を生成する複数の反応系の総称であるが、窒素酸化物は、大気中酸素の光酸化によるオゾン生成反応、炭化水素の酸化によるPAN、アルデヒド等の生成反応に関与していることは明らかであり、今後、これらの定量的関係を明らかにし、窒素酸化物対策を推進する上での重要な要素として配慮せねばならない。
 第3の点は、窒素酸化物が、燃焼過程を通じて必然的に発生する汚染物質であり、発生源形態の複雑さが対策の推進に大きな障害となっている点である。とりわけ都市部においては、移動発生源からの環境濃度に及ぼす寄与が大きく、固定発生源の削減を厳しく行ったとしても、現状の交通体系、都市形態を前提にする限り、排出抑制による環境改善効果には一定の限界がある。
 したがって、今後の地域開発においては土地利用、道路計画等の立案に当たり、十分な大気汚染防止に対する配慮を行うとともに、既成市街部の整備に当たってもこの点に十分留意する必要がある。
 環境庁は51年度に見られた対策技術の進歩と、調査検討に基づく現状分析及び将来の見通しを基調として、52年度にはまず当面可能な防止技術等による固定発生源に対する最善の排出規制の強化(第3次規制)を実施するとともに、53年5月までの間の地方自治体による上乗せや協定による規制に対して、将来の規制スケジュールとの関連を踏まえて、無駄な重複投資等を避けるよう適切に指導をして行くこととしている。
 また、現在の環境基準は47年までの知見に基づく判定条件によって決められたものであるが、その後5年を経過してWHOの専門家会議の報告や、複合大気汚染健康得強調査結果等も公表されたので、それらの新しい知見を取りまとめて基準の基礎となる科学的な判定条件をより豊かな、より確かなものとするため、「公害対策基本法」第9条第3項の趣旨にのっとり、中央公害対策審議会に諮問を行ったところである。一方、地域差を設けて工場単位に排出総量を規制する総量規制については、窒素酸化物の汚染予測手法を用いて、高汚染地域では段階的に環境基準を達成する方式を考えており、既にかなりの知見を得ている。また、50年度以降進めてきた業種別の費用効果や経済的なインパクトのモデルと、規制の進め方の選択肢別の比較データ等に基づく長期の最適化された規制の方向についての資料も整えられることとなっている。そこで新たな知見を加えた判定条件を基礎として、53年度以降の窒素酸化物対策の長期計画についての検討を行い、このなかで新たな努力目標としての期間を明らかにしていくこととしている。


(3) 固定発生源対策
ア 規制の現況等
 窒素酸化物の排出基準は、48年8月に設定され(第1次規制)、その後、50年12月に基準値の強化、規制対象施設の拡大等が行われた(第2次規制)。
 第1次規制では、大型のボイラー及び加熱炉並びに硝酸製造施設を対象に排出基準値を設定したが、第2次規制においては、基準値を強化し、対象施設を中型施設にまで拡大するとともに、セメント焼成炉及びコークス炉(いずれも新設のみ)を新たに規制対象に加えた。
 51年度においては専門家の意見を聞き、固定発生源から排出される窒素酸化物の排出低減技術の開発状況について検討を行った。環境庁大気保全局は51年8月から11月にかけて窒素酸化物防除装置の開発メーカー及びユーザーからヒヤリングを行い、更に提出されたデータの実証のため、実稼動施設に対する実測調査を実施した。このうち、ヒヤリング結果について報告書が52年2月に発表された。現在、これらを基に第3次規制を実施することとし、その検討を行っているところである。
イ 窒素酸化物排出低減技術の開発状況
 固定発生源からの窒素酸化物の低減技術としては、排煙脱硝、低NOX燃焼技術等がある。排煙脱硝技術については、LNG等の燃焼排ガスのように硫黄酸化物を含まず、ばいじんをわずかしか含まない、いわゆるクリーン排ガスについては、50年時点で既に実用化されていたが、51年には、重油燃焼排ガス程度の硫黄酸化物やばいじんを含むダーティ排ガスについても実用規模装置による運転実績により、実用化の域に達しつつある。また、焼結炉排ガス等のよりダーティな排ガスについては、除じん、脱硫等の前処理を完全に行ってから脱硝する例があるが、排ガスを直接処理する脱硝技術については、パイロットプラント等による試験段階にある。
 低NOX燃焼技術は、脱硝に比べて簡便に適用できる技術であるが、適用施設の増大に伴い、各種技術の信頼性が向上するとともに、各種技術の組合せ技術の進歩が見られている。なお、窒素分が少ない軽質燃料を使用すればNOX排出量が低減することも明らかになってきており、ガス化脱硫等重油脱硫の副次的効果として窒素分を減少させる例も見られる。
 なお、50年と比較して窒素酸化物低減技術の進歩の状況並びに実用規模及びテストプラントの排煙脱硝装置の設置状況はそれぞれ参考資料6及び7に掲げたとおりである。
ウ 窒素酸化物に係る汚染予測手法の開発状況等
(ア) 窒素酸化物の汚染予測手法の確立には、硫黄酸化物の場合と異なり、次のような問題がある。窒素酸化物は燃料の燃焼過程で燃料中の窒素分のみならず空気中の窒素(N2)が酸化されても発生するため、その発生源には家庭も含まれるなど複雑で多様であること、ばい煙発生施設だけでなく自動車による環境濃度への寄与も大きく、地表に近い大気層における拡散も考慮すべきこと、そして、排出直後の排出ガス中の窒素酸化物はほとんどが一酸化窒素であるため、その二酸化窒素への変化を考慮しなければならないことなどである。
 したがって、窒素酸化物の合理的な削減を資するため、各方面において、窒素酸化物の汚染予測手法の確立のための努力が積み重ねられているところである。
 今後も、
? 中小の固定発生源及び移動発生源からの窒素酸化物排出実態のは握
? これらに係る窒素酸化物の拡散の推定方法の確立(低層、局地的拡散モデルの確立)
? NOからNO2への変化のは握
? バックグラウンド濃度のは握
? 環境濃度の的確なは握
 などについて、なお調査検討を進めていく必要がある。
 しかし、窒素酸化物の汚染予測手法については、既にかなりの知見が得られている。
 窒素酸化物の汚染予測モデルとしては、NOX中のNOとNO2との関係を求める方法によって異なったモデルが、考えられており、
? NOからNO2への光化学反応を含めた物理科学的反応モデルを確立して、その反応モデルより求める方法
? NOからNO2への反応を統計的手法によって明らかにし、その統計モデルをNOX(NO+NO2)としての汚染予測手法に組み込むことによって求める方法
? NOXとしての汚染予測結果に対し、各測定局におけるNO2/NOX比の統計処理に基づいて導き出される係数を用いて求める方法
 等が検討されている。
(イ) 特に汚染の著しい地域に適用することとしている窒素酸化物の総量規制については、中間的な目標値を設定して、段階的に環境基準の達成を図ることとしているが、(ア)に述べた窒素酸化物汚染予測手法の開発状況からみて、当面の総量規制に必要な知見は得られてきていると考えられる。このような総量規制の具体的な進め方については53年度に実施に移し得るよう準備を進めているところである。
エ 削減率と削減後濃度との関係等
(ア) 削減率と削減後濃度との関係
 二酸化窒素による大気汚染状況等を見るために、固定発生源のNOX削率減と削減後濃度との関係を示すこととする。削減率は、次の手法によって求めた。
? 二酸化窒素の現在の環境濃度と目標環境濃度から、それぞれバックグラウンド濃度を差し引いた値の比率を削減率とする。なお、バックグラウンド濃度は、いわゆるナチュラル(自然の)バックグラウンド以外に規制の対象とならない群小煙源等を含め、1日平均値で0.01ppmと仮定する。
? 自動車排出ガスによる汚染は自動車排出ガスの削減で対処されるべきであるとの考えから、固定発生源の削減率を導く際には、一般環境大気測定局のデータを使用し、自動車排気ガス測定局のデータは除外する。一般環境大気測定局であっても、その設置状況等から自動車排出ガス測定局と同等の局地的な自動車排出ガスの影響を受けていると思われるものについては、これを慎重に扱うべきであるとの考えから、ここではとりあえず、一般環境大気測定局のデータのうちNO2/(NO+NO2)が0.5未満のものを除外する。
 なお、これらの操作を行った後でも、一般環境汚染測定局に対して移動発生源からの窒素酸化物が相当寄与しており、目標環境濃度が達成されるには、移動発生源においても、少なくとも固定発生源と同等の削減が必要であろう。
 以上の前提に立って、50年度の環境測定データを基準にした削減率と削減後濃度との関係を第2-2-3図に示す。
 ここでは地域を代表する環境濃度として便宜的に上位3測定局の平均値を採用しており、削減率の数値は試算の域を出ないものであるが、東京、大阪等において環境基準を達成するには、86%〜90%程度の削減が必要である。
 また、48年5月の環境庁告示第25号(大気の汚染に係る環境基準について)示された二酸化窒素の環境基準に係る中間目標を1日平均値の98%値に換算するとほぼ0.04ppmになるが、これを達成するために必要な削減率は、東京、大阪等で、57%〜70%程度であり、中間目標値についても、高汚染地域では相当大幅な削減が必要である。
 なお、以上から明らかなように、目標環境濃度に対応する削減率は地域の汚染レベルによって大きな差があるが、現在の排出基準は、全国一律に適用されるため、今後の規制に当たっては、総量規制を含めた地域差のある規制手法の実施が必要である。
(イ) 低煙源の窒素酸化物の寄与濃度等
 一般に排出口の高い高煙源は、地域全体を広く汚染しているが、低煙源にあっては、窒素酸化物排出量はあまり大きくはないが、煙源に近い測定局に対する寄与濃度は、かなり高いことが知られている。
 これらのことから、二酸化窒素による大気汚染を着実に改善していくためには、高煙源への対策のみならず、低煙源への対策も推進していく必要があると思われる。
 また、二酸化窒素の環境濃度については第2-2-4図に示すとおり、季節的変動が大きく冬期に高くなる傾向があるので今後この点にも留意する必要がある。
第2-2-4図 50年度NO2

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