前のページ 次のページ

第2節 

2 地域ごとの規制基準の設定状況

 現行の法制度の下では、硫黄酸化物の規制については、「大気汚染防止法」に基づいて総理府令により地域ごとに異なるK値を定め、それによる規制(K値規制)が行われており、また汚染発生源が集積しているためこのK値規制のみでは環境基準の確保が困難な地域においては、都道府県知事が総量削減計画を作成し、総量規制基準を定めることとなっている。その他の大気汚染、水質汚濁については、都道府県が条例によって国の定める排出基準より厳しい排出基準を設定し得ることとされており、また、騒音、振動及び悪臭については、都道府県知事が規制対象地域を指定した上で、当該地域の区分ごとに国の定めた基準の範囲内での規制基準を定めることとされている。
 まず、硫黄酸化物の総量規制の実施状況について見ると、52年2月末現在、四日市、東京、横浜等24地域が総量規制地域として指定されている。これらの指定地域は、全国の可住地面積6.2%を占めるにすぎないが、ここで使用される液体燃料使用量は全国使用量の約6割に該当している。このうち、総量規制基準が公示されている8地域(52年2月末)について、その地域全体の総排出量及び目標排出量を見ると、第2-12図のとおりである。
 地域の環境基準を達成するために必要な目標排出量は、その地域の面積、気象、地形、発生源の状況等の地域特性に応じ、半田・碧南等地域の570Nm
3
/hから千葉・市原等地域の8,174Nm
3
/hまで地域ごとに大きな差異がある。計画作成基準年度排出量をこの目標の排出量の範囲内に抑えるための削減率も汚染レベルや計画作成基準年度における規制レベルの相違を反映し、地域によって様々であるが、かなりの削減率となる地域が多い。
 次に、上乗せ規制の実施状況を見てみよう。大気汚染に係る上乗せ規制については、51年10月末現在20の都道府県において実施されている。これを汚染因子別に見ると、ばいじんに係るもの6府県、塩素、塩化水素等の有害物質に係るものは、それぞれの物質ごとに6〜16都道府県となっている(第2-13表)。
 水質汚濁に係る上乗せ規制(51年10月末現在)は、カドミウム、シアン化合物、六価クロム化合物等の有害物質に関して、第2-13表に示すように実施されているが、水質汚濁の生活環境項目のうちのBOD又はCOD及び浮遊物質量(SS)については、47都道府県すべてにおいて行われている。
 このように汚染物質ごとに上乗せ規制の実施状況が異なるのは、有害物質については、通常の場合それによって人の健康が保護される厳しい基準が国によって設定されているため、必ずしも上乗せ規制を必要としていないのに対し、水質汚濁に係る生活環境項目に関しては、利水目的、汚濁の程度によって水域ごとに環境基準の類型当てはめが異なるだけでなく、地域ごとに汚染発生源の状況も異なる等のため地域の特性に応じた規制が必要とされることによるものである。
 水質汚濁の生活環境項目に関する上乗せ規制の内容を見ると、都道府県、水域、業種、施設の規模や新・既設の別によって異なったものとなっている。このため、その内容を一般的に示すことは困難であるが、1日平均排水量50〜100m
3
規模の食料品製造業に対するBOD又はCOD及び浮遊物質量に関する規制基準を見てみると第2-14図のようになっており、一般的に見て、新設施設に対する規制が厳しくなっている。
 次に各地方公共団体による公害防止条例の制定状況を見ると、全都道府県と市町村の14.1%に当たる460市町村が条例を制定している(51年10月)。
 都道府県の公害防止条例の内容を見ると、すべての条例において大気汚染、水質汚濁、騒音、振動及び悪臭が規制の対象とされており、その規制対象施設には法律において規制対象としていないものを含むこととしているほか、特定の地域において工場、事業場の立地を規制したり、水質汚濁に関して総量規制方式を導入する等の規制を行っている。
 更に地方公共団体独自の規制方式として、公害防止協定を挙げることができる。公害防止協定は、地方公共団体と事業所との間で公害防止のために事業者が採るべき措置を相互の合意により取り決めるもので、39年に横浜市が臨海工場用埋立地の分譲に際し、公害防止に関する総合的な予防措置について協定書の形に取りまとめたのがその嚆矢であるといわれている。その後公害防止協定を締結することが急速に普及し、51年10月現在、協定数は約1万1千に達している。
 公害防止協定締結事業所数を業種別に見ると、金属製品製造及び機械工業が最も多く、次いで、化学工業、窯業・土石業の順になっているが、締結事業所の全事業所に対する比率は、石油・石炭製品製造業22.4%、化学工業16.7%、鉄鋼業5.1%、非鉄金属製造業4.5%の順になっている(第2-15表)。


第2-14図 水質汚濁の生活環境項目に係る上乗せ規制の状況(1日平均排水量50〜100m
3

前のページ 次のページ