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第2節 

1 環境保全対策の体制整備

 前節で見たように、地域ごとに見た環境汚染の現状は様々であるが、各地域において環境保全行政はどのように進められてきているかを見ることにしよう。
 環境問題の解決のためには、汚染状況が地域ごとに異なるので、地域の特性に応じたきめ細やかな施策が要請されるとともに、公害問題は地域住民の生活に深くかかわるので住民と身近な立場にある都道府県や市町村がこの問題に対処することが適当であることが多い。このため環境保全に関する施策の体系においても、国は基本的・総合的な施策を策定・実施するのに対し、監視・取締り等公害規制の直接の実施、上乗せ基準の設定、環境基準の類型当てはめ、環境保全施設の建設事業の実施等の権限は都道府県や市町村に大幅に委譲されている。このうち都道府県(又はその知事)は、環境基準の類型当てはめ、上乗せ条例の制定等の施策を行うほか、大気汚染や水質汚濁のような比較的広い地域にわたる公害についての監視・取締り等を実施している。他方、市町村(又はその長)は、騒音・振動、悪臭のような比較的狭い地域の公害についての取締り等を実施するほか、公共下水道、廃棄物処置施設等の環境保全施設の整備等を行っている(第2-9表)。
 このような地方公共団体の環境保全行政における役割の重要性を反映し、地方公共団体の公害行政担当の行政組織、職員及び公害対策経費については、拡大充実が図られてきている。
 まず、公害行政担当の行政組織について見ると、公害の専門担当課を有している都道府県は、「公害対策基本法」の制定された42年から急速に増加し、環境庁が設置された46年には、すべての都道府県に置かれるようになった。公害の専門担当課は、大部分の都道府県において、生活環境部、環境保健部等の部局に属している(51年末現在)が、これらのうち12団体においては、環境保全行政だけを専管している。このほか、医務薬務等衛生行政を含むものが14団体、消費行政、消防行政等の衛生行政以外の行政を含むものが17団体となっている。また、市町村においても51年10月末現在、全市町村の7.9%に当たる256市町村が公害行政専門の課(室)を設置している。
 公害行政担当の職員については、都道府県で46年の2,634人から51年には6,267人(いずれも兼任職員を含む。)へと5年間に2.4倍に、市町村では、46年の3,411人から51年には6,904人(専門職員)と2.0倍に増加している。
 公害対策経費については、45年度の3,735億円から50年度の1兆4,258億円と、3.8倍に増えており、この間の地方公共団体全体の歳出総計の伸びが2.6倍であることから見ても、地方公共団体が公害対策に力を注いできたことがうかがえる(第2-10図)。その内容を見ると、下水道事業費が最も多く、常に6割前後を占め、それに廃棄物処理施設整備費等を加えた建設事業費が公害対策経費のほぼ9割を占めてきている。他方、人件費、監視測定用の機器購入費等の経常費も監視体制等の充実を反映し、50年度には681億円となっており、45年度の162億円の4.2倍に達している(第2-10図)。
 大気汚染、水質汚濁の状況に関する常時監視等各種監視測定業務は、都道府県知事又は政令により事務を委任された市の長が実施することとなっており、そのための体制の整備が促進されてきた。特に、大気汚染については、その多様化、広域化に対処するため、汚染状況を迅速、的確には握することが求められており、都道府県及び政令により事務を委任された市に設置されている大気汚染測定局数は、47年度末の803局から50年度末には1,216局に増加し、また中央監視局においてテレメータで伝送されてきたデータを演算処理し、印字記録するデータ処理装置数も47年度末の46基から50年度末には74基と大きく増加している(第2-11図)。
 公害の苦情処理については、その適切な処理が住民の生活環境を保全するためにも、また将来における公害紛争の未然防止のためにも、極めて重要であることから「公害紛争処理法」により、都道府県及び人口10万人以上の市(50年3月以前には25万人以上の市)は、公害苦情相談員を置かなければならないものとされている。全国の地方公共団体に置かれている苦情相談員も47年の2,325人から51年には3,505人(いずれも兼任職員を含む。)と増えている(公害等調整委員会調べ)。

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