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第2節 

2 産業廃棄物の処理状況

 まず、産業廃棄物処理施設の整備について見ると、民間の産業廃棄物処理関連投資は、46年度104億円(実績)であったが、50年度468億円(実績見込)、51年度537億円(計画)となり、46年度に比べてそれぞれ4.5倍、5.2倍の増加となっている。また、民間の産業廃棄物処理関連投資の全公害防止投資に対する比率は、50年度4.0%、51年度4.9%となっている。
 次に、産業廃棄物処理経費について、通商産業省が48年度製造業2,592工場を対象にして行った調査結果を見ると、脱水、乾燥、焼却、中和、破砕等の中間処理経費が435億円、埋立処分等の最終処分経費が238億円となっている。第3-9図及び第3-10図のように、中間処理経費では、化学工業(25.1%)、鉄鋼(22.3%)、紙パルプ(13.1%)で製造業全体の約6割を占め、最終処分経費では、鉄鋼(21.3%)、化学工業(15.3%)、輸送機器(13.4%)で製造業全体の約5割を占めている。また、種類別にいえば、汚でい(38.3%)、廃酸(15.0%)、廃油(9.4%)が中間処理経費のうちの約6割を占め、汚でい(33.6%)、鉱さい(16.9%)、ダスト類(13.5%)が最終処分経費のうちの約6割を占めている。
 法律では、産業廃棄物は、排出事業者により単独に又は共同して処理されるか、産業廃棄物処理業者への委託によって処理されることとされているのであるが、50年における警察による全公害事犯の検挙件数3,572件中、廃棄物処理法違反が2,417件(67.7%)に達していることから分かるように、排出事業者、処理業者を問わず、その処理が適正に実施されているとは必ずしもいえない。
 なお、最終処分地の確保、特殊な産業廃棄物の処理の実施等の産業廃棄物の適正な処理の実効を確保するため、第3-11表に見るように、10府県において、地域の要請により、これらの府県が、処理事業実施主体を設立し、処理施設の管理運営を委託する等により、処理事業を実施しているか、又は計画をもっている。
 更に、48年度における産業廃棄物の種類別資源化率を見ると、金属くず97.4%、動植物性残渣80.7%、ダスト類45.7%と高いものもあるが、全般的にはいまだ低い水準にある(第3-12図)。
 また、アメリカ、西ヨーロッパの諸国においても、産業廃棄物の適正な処理を図ることは、環境保全対策上の重要な課題となってきている。
 第1に、有害な廃棄物に関して、アメリカ環境保護庁長官の「有害な廃棄物の処分」に関する報告書が連邦議会に提出されているが、それによれば、同国において非放射性の有害な廃棄物は年間1,000万トン生じていると推定され、かつ、この量は毎年5〜10%増加しているといわれている。このような廃棄物の処理対策として、有害な廃棄物の管理に関する規制によって、廃棄物処理業者の処理能力250万トン/年に対する需要を喚起することのほか、場合に応じて融資、保証等の公的助成を必要とするであろうことを述べている。
 また、イギリスでは有毒な廃棄物の不法投棄を全般的に禁止し、その違反に対してはその結果生じた損害の賠償責任を明らかにするとともに、廃棄物の搬出及び埋立処分の届出を義務付ける「有毒廃棄物投棄法」が、1972年制定されたが、新たに1974年に同法を廃止し、廃棄物に関する規定を更に強化する内容を含む「公害防止法」が制定された、同法においては、危険な廃棄物あるいは処理困難な廃棄物の処理について、行政庁に指示する権限を賦与するとともに、廃棄物の排出者、取扱者に特殊な廃棄物の適当な保管、排出、取扱量の記録備付け等を義務付けている。
 第2に、廃棄物の処理における公共関与について、西ドイツでは、地方公共団体が廃棄物の種類又は量の点からみて、一般家庭から生じる廃棄物と合わせて処理することのできない廃棄物については、所有者が自ら処理することとしているが、次のような形態の公共関与による産業廃棄物処理事業も行われている。州政府、地方公共団体、民間企業の出資による第三セクター(バイエル州特殊廃棄物処理会社、資本金100万ドイツマルク)が、州政府による広域廃棄物処理計画に基づき、特殊廃棄物の中間処理、埋立処分を行っており、また、地方公共団体の出資による一種の一部事務組合(中部フランケン地区特殊廃棄物処理組合)が、特殊廃棄物の焼却処理、廃油の油水分離、汚でい、燃えがら及び有害性廃棄物の埋立処分を行っている。
 第3に、廃棄物の再資源化に関して、フランスにおいて現在、「廃棄物の処理及び資源の回収に関する法律案」が提案されている。同法案では、環境の保全又は省資源のため、政府が回収すべき資源の最小限度を定めるとともに、廃棄物回収、処理を促進するため、補助金、貸付金の交付を行う廃棄物回収処理事業団ともいうべき特殊法人が設立されることとなっている。
 このように、諸外国においても、廃棄物対策に関する提言が行われ、規制の拡充強化、体制の整備が図られてきている。これらの諸外国と我が国との間には、経済面、法制面等において相違が存在するので、これらの制度を一律に我が国に導入することは困難であるが、我が国においてもこれらの例を参考としつつ、検討を進める必要がある。

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