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第2節 

1 産業廃棄物の状況

 産業廃棄物対策を樹立するためには、産業廃棄物の量のは握が重要である。しかし、産業廃棄物の種類が実態上必ずしも明らかでないこと、発生量の計測が一般的にたやすくないこと、状況のは握体制が確立されていないこと等の理由があるため、その発生量を正確に知ることは難しい現状にある。通商産業省調べによれば、48年度における製造業の産業廃棄物発生量は、約3億4千万トンとなり、ごみの排出量約3,500万トン(厚生省調べ)に比べ、その約10倍に相当する巨大な量となる。
 業種別に発生量を見れば第3-7図のように、鉄鋼(29.8%)、非鉄金属(14.0%)、化学工業(13.2%)の3業種が産業廃棄物を多く排出し、製造業全体の5割以上を占めている。
 また、産業廃棄物を種類別に見れば、廃酸(29.7%)、鉱さい(21.1%)、汚でい(17.6%)が多く発生し、全体の6割以上を占めている。
 今後、経済活動の拡大に伴って、産業廃棄物発生量が増加することは避けられないところであるが、このほか次のように公害防止設備の増加に伴う発生量の増加も予想される。
 ばい煙を各種の水溶液に吸収したり、液体によって還元したりするばい煙の湿式処理においては、汚染物質を含んだ廃液が生じるし、気体の状態で汚染物質を除去する乾式処理では、生成した化合物、廃触媒が生じることとなる等、大気汚染の防止施策の進展による排煙処理設備の増設、高度化に伴って汚でい、ダスト類等の増加が予想される。
 また、都市の健全な発達と公衆衛生の向上に資する基盤的な施設であり、また、良好な水質環境の回復と保全のための欠くべからざる施設でもある下水道についてみても、49年度末現在、汚でいの処理を行っている全国約260か所の終末処理場で、脱水汚でい(含水率おおむね70%)の状態で年間270万トンの発生を見ている。今後更に、終末処理場の整備、砂ろ過、凝集沈でん等の処理の高度化が進められるに従って、汚でいの量が増加するものと見込まれる。
 49年度に行った有害物質を含む産業廃棄物の発生過程に関する調査研究(厚生省調べ)によると、鉱業及び製造業から排出される汚でいには有害物質を含有しているものもある。また、6価クロム含有鉱さいについて見れば、第3-8図のように、戦前から50年7月までに6価クロム化合物製造工場から発生した6価クロム含有鉱さいの量は、約115万トンに達しているが、廃棄物処理法が施行された46年以前において、十分に処理されないまま投棄された6価クロム含有鉱さいが環境汚染問題をおこしている。この鉱さいの埋立地においては、従来から覆土工事やしゃ水壁の設置等の措置が講じられてきたところであるが、地方公共団体において実施されているこれら鉱さいの埋立処分地の環境汚染調査の結果に応じて、更に、所要の対策を検討していくことが必要である。
 以上、産業廃棄物の状況を見てきたが、産業廃棄物については、その発生量、物理的化学的組成等の状況がほとんどは握されていないので、これらに関する情報、統計を早急に整備しなければならない。

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