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第1節 

2 公害紛争の処理状況

(1) 概  要
 「公害紛争処理法」による和解の仲介(49年11月1日からあっせんに代る。)、調停、仲停及び裁定の申請件数(参加の申立て、移送、引継ぎによるものを含む。以下同じ。)は、45年11月の制度発足から49年12月末までに申請 があったもの177件であり、これらのうち57件が49年度中に申請があったものである。49年の新受件数を前年と比べると、中央委員会、公害審査会等のいずれもほぼ横ばいである。
 49年中に係属した事件は、上記57件及び前年から繰越した58件の合計115件である。このうち44件が同年中に終結した。
 なお、中央、地方別の紛争処理状況は第9-1-1表、公害の種類別、手続の種類別申請件数は第9-1-2表のとおりである。


(2) 中央委員会に係属した事件
 49年中に中央委員会に係属した事件は、調停事件65件、裁定事件6件の計71件である。71件のうち、40件が前年から繰り越したものであり、31件が49年に新しく申請(参加の申立て10件を含む。)のあったものである。裁定事件の係属は、47年9月30日の制度発足以来初めてであり、いずれも責任裁定事件である。
 49年中に終結を見た事件は、調停が成立したもの27件、責任裁定の申請の取下げがあったもの2件の計29件である。
? 調停事件
 係属した65件の調停事件の内訳を見ると、不知火海沿岸における水質汚濁による水俣病事件40件、渡良瀬川鉱毒による農作物被害事件5件、大阪国際空港周辺地域における航空機騒音による生活環境被害事件19件、徳山湾における水質汚濁による漁業被害事件1件であり、申請書総数は、約21,000名の多数に上り、とりわけ大阪空港騒音事件は、19,000余名のマンモス事件となっている。
 終結した事件は27件で、不和火海沿岸における水質汚濁による水俣病事件が23件(患者数203名)、渡良瀬川沿岸における鉱毒による農作物被害事件が4件(申請者数971名)でありいずれも調停が成立して終結した。このうち渡良瀬川沿岸における鉱毒被害事件は、足尾銅山から排出される廃棄物鉱さいが水田等に流入したことにより農作物被害を被った渡良瀬川沿岸の農民と古河鉱業との問における補償を巡る事件であり、被害と加害行為の因果関係の立証、損害額の算定等が非常に困難な事件であるのに加えて、その背景には80年にわたる被害者のおん念という歴史的な重みがある事件であり、各方面からその成り行きが注目されていたが、49年5月11日被害が最も広範囲であった群馬県毛里田地区の農民971名について、会社側との間に調停が成立した。
? 責任裁定事件
 係属した事件は、49年中に申請があった富山市又は大阪市におけるビル建築工事に伴う地盤沈下による建築物損傷事件3件、尼崎市における大阪国際空港の航空機騒音による健康被害事件、東京都新宿区における地下鉄工事に伴う騒音、振動、地盤沈下による営業損害事件、長野県中野市におけるカドミウム汚染による農作物被害事件が各々1件である。このうち大阪市におけるビル建築工事に伴う地盤沈下による建築物損傷事件及び尼崎市における大阪国際空港の航空機騒音による健康被害事件については、申請の取下げがあり、事件は終結した。
(3) 都道府県公害審査会等に係属した事件
 49年中に都道府県に係属した事件は、調停事件33件、あっせん事件7件、仲裁事件4件、計44件である。
 44件のうち、18件が前年から繰り越したものであり、26件が49年中に新しく申請(参加申立4件を含む。)のあったものである。
 都道府県別に見ると、東京都10件、大阪府9件、京都府6件、熊本県3件、瀞岡県、愛知県、兵庫県、福岡県各2件、青森県、群馬県、埼玉県、千葉県、石川県、長野県、広島県、沖縄県各1件である。
 これらを請求事項別に見ると、発生源対策を求めるものが26件、金銭の支払いを求めるものが18件となっており、発生源対策を求めるものが増加する傾向にある。
 一方、これらを公害の種類別に見ると、最も多いのが振動の関係しているもので29件であり、次いで騒音関係23件、大気汚染関係18件、水質汚濁関係7件、地盤沈下関係4件、土壌汚染関係2件、悪臭関係1件となっている。
 49年中に終結をみた事件は15件であり、調停が成立したもの12件、打切りのあったもの2件、申請の取下げのあったもの1件である。
 (注) 公害の種類別の数は、都道府県に係属した事件数を超えているが、これは、同一の事件について複数の公害被害がある場合があるからである。

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