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第1節 OECDの活動

 OECD(経済協力開発機構)環境担当閣僚会議は、49年11月13日から15日までパリで開催され、加盟24国のほとんどから環境担当閣僚が出席した。OECDでは1970年に環境委員会が設立されて以来種々の環境問題に幅広く取り組んできたが、このように加盟各国から環境担当閣僚が出席しての会議は初めてのものであり画期的な出来事であった。我が国からは毛利環境庁長官が首席代表として出席し、オーストラリア及びスペインの各大臣とともに副議長に選出された。
 会議では1980年代を目指した環境政策−工業化社会の責任とOECDの役割−をテーマとして熱心な議論が重ねられたが、汚染者負担の原則や国境を越えた汚染に関する諸原則等各国の利害が鋭く対立した点があったにもかかわらず、環境政策に関する宣言及び10項目にわたる行動計画を採択したことは高く評価される(参考資料11参照)。以下に会議とその成果についての概要を述べる。
(1) 一般演説
 会議では各国代表の一般演説が行なわれ、我が国の毛利代表は、我が国の環境問題の概要と我が国が国民の健康保持と健全な生活環境の確保のために払っている努力について述べるとともに、今後の環境委員会の活動について、
? 環境問題に対する総合政策的なアプローチを検討するための協力
? 環境に関する諸基準の実態は握
? 発展途上国に対する活動成果の提供
 といった三分野に重点を置くよう提言した。
 なお、各国代表の一般演説を通じて次のような点が強調された。
? 現在の経済情勢やエネルギー情勢が、環境政策の重要性を損なうものであってはならないこと。
? 環境政策が第二の時代に入り、今や事後対策から未然防止対策へと視点を転換させていくべきこと。
? 環境政策は、都市政策や土地利用計画等他の種々の政策と総合的に考慮すべきであること。
? エネルギーを含め天然資源の節約、再利用及び合理的利用を達成すべきこと。
(2) 環境政策に関する宣言
 環境委員会設立から4年を経過した今日の変化する社会・経済状況の下で人間環境及び生活の質を保全し改善するため、環境政策に関する宣言を採択した。
 この宣言は前文と11項目からなっており、「生産量のみならず、生活の質にかかわる全ての要素を勘案した」経済成長に対する新たなアプローチを促進するとのOECD加盟諸国の決意を表明するとともに、より具体的には、都市環境、新規のエネルギー源の開発と環境保全の問題、無公害技術等の促進、汚染者負担の原則の遵守、総合的な環境計画の必要性、環境アセスメントの必要性等について述べている。
(3) 行動計画
 前記環境宣言の精神を踏まえ、より緊密な国際協力が必要な諸問題として環境担当閣僚会議は次のような10項目にわたる行動計画を採択し、OECD加盟国に対して勧告するよう理事会に提案し、理事会はこれを加盟国に対する勧告として採択した。行動計画は今までの環境委員会の成果を集約するとともに今後各国が環境政策を推進していく上での具体的方向を示すものとしてきわめて重要なものである。
? 化学物質の環境に与える潜在的影響の評価
? 公共及び民間事業の環境への影響の分析
? 騒音の防止及び緩和
? 交通制限と低費用による都市環境の改善
? 大気汚染規制の強化措置
? 水の富栄養化防止
? 特定水質汚染物質の規制方法
? エネルギーと環境
? 汚染者負担の原則の実施
? 越境汚染に関する諸原則
 以上が環境担当閣僚会議の概要であるが、このほか、OECD理事会は環境委員会の提案に基づき、49年6月18日、固定発生源による大気汚染防止のための勧告を採択した。その内容は、都市地域では低硫黄燃料を使用し、硫黄含有量の高い燃料は脱硫装置等が設置された施設でのみ使用するといった政策を推進しようとするものである。
 また、環境委員会には大気管理、水管理、有害化学品、都市環境の各セクターグループ及び経済専門家小委員会など常設下部機構のほか、更に、エネルギーと環境、都市環境指標の作成といったその時々の問題に応じて、幾つかのアドホックグループが設置されているが、49年度においてはエネルギーに関連した諸問題が多くの議論の対象になったほか、環境政策の国際比較、都市環境指標の作成、交通制限による都市環境の改善、化学物質の環境影響のは握に必要な情報の国際調査等重要な問題の討議が行われた。我が国は部会をはじめこれら専門家会合にも極力参加しOECD活動に積極的に貢献している。

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