前のページ 次のページ

第2節 

4 光化学反応による大気汚染対策の推進

(1) 光化学大気汚染の現状
 45年5月に東京で光化学大気汚染によると思われる被害事例が発生して以来、国や地方自治体ではオキシダントの監視測定体制の整備に努めるとともに、都府県ではそれぞれオキシダント緊急時対策要綱を定め、オキシダント濃度に応じた予報、注意報、警報等を発令し、発生源対策と住民対策を実施してきた。
 すなわち、45年には東京と大阪にそれぞれ1局にすぎなかったオキシダント測定局は、47年3月には107局、48年3月には243局、更に49年3月には425局になった。
 その結果、一部の地方を除けはほぼ全国においてオキシダントの監視測定ができるようになった。監視測定体制の整備に伴い、予報や注意報(オキシダント濃度1時間値0.15ppm以上)の発令回数も急速に増加し、49年には4月から10月のいわゆる暖候期に、全国22都府県で288回のオキシダント注意報が発令された。
 なお、このうち49年に新たに注意報が発令された県は、山口県及び徳島県であり、48年に引き続き大都市のみならず地方の中小都市においても光化学大気汚染が見られるようになった(第2-2-4表参照)。
 また、49年度において、光化学大気汚染によると思われる健康被害として都道府県に自主的に届け出られた数は、第2-2-5表に示すとおり14,725人で我が国で初めて届出のあった45年以来の累計は133,941人に達している達している。
 一方、光化学大気汚染の要因物質である窒素酸化物や炭化水素の監視測定体制は次第に整備され、これらの測定データの解析、東京湾地域や大阪湾地域等における大気調査、スモッグチャンバーによる実験等によって汚染物質相互間の関係や、PAN、アルデヒド、アクロレイン、ミスト等の存在も確認され、オキシダントの発生と気象条件の関係や健康影響、植物影響等の調査も着々と進められて、我が国における光化学大気汚染の実態も徐々に明らかにされつつある。


(2) 光化学大気汚染対策
 光化学大気汚染対策については、47年に設置された関係12省庁で構成される光化学スモッグ対策推進会議の決定の線に沿って、49年度は次のような対策を推進した。
ア 環境基準の設定
 光化学反応による大気汚染の主要な要因物質としての窒素酸化物と2次生成物である光化学オキシダントの環境基準が48年5月に設定されたが、窒素酸化物と並んで光化学オキシダントの要因物質である炭化水素についても環境基準の設定の検討を行っているところである。
イ 固定発生源対策
 窒素酸化物の排出基準の適用対象施設の追加等排出規制の強化について検討を進めている。
 炭化水素については、排出態様が複雑であるので排出実態の調査と併せ、規制方法についても検討を進めている。
ウ 移動発生源対策(自動車排出ガス対策の推進の項参照)
エ 予報及び監視体制の整備
 光化学反応による大気汚染等の発生しやすい気象条件の解析や予報をする体制の強化を図るため、既に設置されている東京、大阪、名古屋、広島の大気汚染気象センターに加え、新たに福岡管区気象台に大気汚染気象センターを設置するとともに、管下の地方気象台における大気汚染気象業務を充実し、通信網を整備するなどしで情報提供体制を整備した。
オ 保健対策
 光化学反応による大気汚染の健康への影響については未解明の分野が多く残されているので、健康被害と環境条件との関係等を究明するため、疫学的、臨床医学的調査とともに環境大気調査等を行った。
カ 調査研究の実施
 光化学反応による大気汚染は、その発生機構、影響等に関し、まだ解明されていない問題も多く残されているので、国の試験研究機関を中心に、測定技術、生物への影響等についての研究を行った。
 また、光化学反応による大気汚染の実態は握のため、環境庁において、大阪湾地域を対象にして光化学スモッグの発生状況、健康影響等の総合的調査を実施した。
キ 国際協力
 OECD(経済協力開発機構)大気管理センターグループの会議が47年9月に日本で開催された際、我が国の提案で光化学スモッグに係る専門委員会が設置され、49年度においては、日本、アメリカ及びオーストラリアにおける光化学スモッグの経緯、気象、発生源、影響及び対策等に関する情報を収集し、その取りまとめを行った。
 また、アメリカはロスアンゼルス地区等における光化学スモッグについて多くの経験を有していることにかんがみ、我が国の発案により、日米公害閣僚会議の専門部会として日米光化学大気汚染委員会を組織し、第1回会議を48年6月東京で開催し、主として技術面の情報交換と討議を行った。その際の合意事項に基づいて49年度には我が国から技術者を派遣してその後の情報交換、研究協力等を行った。

前のページ 次のページ