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第1節 

2 公害健康被害補償制度の実施

(1)概要
 公害健康被害補償法は、公害に係る健康被害者に対し、その損害をてん補するための補償給付の支給を行うとともに被害者の福祉に必要な事業を実施することにより、被害者の迅速かつ公正な保護を図ることを目的とするものであり、48年9月第71回国会において成立した。49年度においては、制度実施に備えて所要の準備作業を急ぎ、補償給付の支給及び賦課徴収の実施を開始することとしている。
 本制度の本格的な実施は本年秋頃になるが、これが実施に移されれば認定を受けた被害者に対して補償給付(? 療養の給付及び療養費、? 障害補償費、? 遺族補償費、? 遺族補償一時金、? 児童補償手当、? 療養手当、? 葬祭料)の支給が行われ、また、指定疾病により損なわれた健康の回復、保持、増進等被害者の福祉の増進や指定疾病による被害の予防に必要なリハビリテーションに関する事業、転地療養に関する事業等の公害保健福祉事業を行うこととなる。
 また、これに伴い、補償給付等に要する費用として工場、事業場等から汚染負荷量賦課金や特定賦課金の徴収を開始することとしている。
(2) 制度実施のための準備措置
 公害健康被害補償制度の本格的実施に当たっては、まず、政令で定めることとされている種々の重要問題についての検討があるが、これについては、49年度から中央公害対策審議会に本制度の重要事項を審議するための部会を設け、障害の程度の区分や汚染物質の排出量等に関する各種の調査研究結果等を踏まえて検討することとしている。同審議会においては、第一種地域の指定の基準、障害補償費等の給付の水準、障害の程度、賦課徴収における具体的な賦課基準等の重要事項について審議を行うほか、認定の医学的条件、暴露要件として定める居住・通勤等の期間、障害の程度の区分及びその検査方法等の医学専門的事項についても検討することとしている。
 また、本制度の賦課金の徴収を行うとともに補償給付等に必要な費用を都道府県及び政令市に納付する機関として、公害健康被害補償協会を設立し、具体的な賦課徴収のための準備等を行わせることとしている。
 本制度の実施までには、以上のような準備作業を急ぐとともに本制度の趣旨の周知徹底に努め、また、都道府県及び政令市の実施体制の整備、指導に全力を注いで円滑適正な制度の実施を図ることとしている。
(3) 制度実施に伴う経過措置
 現行の公害健康被害救済法(以下「救済法」という。)から公害健康被害補償法への移行に必要な措置として、次のような経過措置をとることとしている。
 公害健康被害補償法の施行の際、現に救済法の認定を受けている者は、公害健康被害補償法の認定を受けた者とみなす。
 救済法の指定地域、指定疾病は引き継ぐこととして、そのまま政令で指定することとしている。
 なお、その他の大気の汚染が問題となる地域については、中央公害対策審議会でその指定の基準について審議を行い、大気の汚染の状況、慢性気管支炎等の発生状況についての調査を行ったうえで基準に照らして同審議会、関係都道府県知事及び関係市長村長の意見をきいて指定していくこととしている。

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