8 自然環境の保全等
自然環境保全のための科学技術開発として、自然生態系機構の解明と、汚染物質の生態系における循環機構を解明する目的で、文部省において「人間の生存にかかわる自然環境に関する基礎的研究」を実施した。農林省においては、土壌及び水域の生態系における汚染物質の循環等を明らかにし、これらの環境中における汚染物質の受容能力をは握するための基礎研究と、生物の利用による環境汚染を判定する手法の技術開発を行うため、「農林水産生態系における汚染物質の循環と指標生物に関する研究」を実施した。
更に、農林漁業が本来有している自然環境保全に資する機能を見直し、生産活動の対象である自然生態系の実態解析を行い、環境を維持培養する方向での生産技術体系の確立を図り、また家畜排せつ物による環境悪化を防除し得る技術体系を確立するため、「農林漁業における環境保全的技術に関する総合研究」を実施した。
環境汚染が人及び自然に及ぼす長期的な影響の解明としては、各種環境下における生物の生態遺伝的変化に関する研究を実施した。
特に貴重な自然地域の保全のための研究としては、環境庁が土木工事等による自然生態系に対する影響を解明するため、「道路建設に伴う森林伐採の生態系に与える影響に関する研究」を実施したほか、新たに「開発の干潟に及ぼす影響に関する研究」を発足させ、沿岸地域開発による自然環境への影響解明に着手した。
環境問題の特性として多種多様な汚染要因が複雑に絡み合い、相互に作用し合っており、その制御の手法としては、総合的な管理技術が求められる。このため、環境庁、建設省、運輸省において、開発事業が環境に与える影響の予測手法開発に着手し、通商産業省においては、緊急に解決を迫られている窒素酸化物について固定発生源及び移動発生源からの発生量と地上濃度との関係を明らかにし、これをもとに対象地域の汚染予測手法の確立を進めた。また、環境計画管理システム開発研究として環境庁において「都市及び周辺地域における自然環境保全計画に関する基礎研究」を行うとともに「市街地の環境制御技術に関する研究」を建設省において着手し、都市計画面からの環境制御を図ることとした。