9 その他の環境保全に関する主な調査研究
(1) 健康影響に関する調査研究
第5章第2節149/sb2.5.2>にのべたとおり環境庁においては、47年度に引き続き、水俣病、イタイイタイ病、大気汚染に起因する疾病、休廃止鉱山に係る疾病、難分解物質及び重金属等の人体影響に関する調査研究を進めるため、「健康被害調査研究費」により、各々の項目ごとに大学等の研究者からなる研究班を組織し、環境汚染と健康被害について総合的に研究を進めた。
(2) 公害防止に関する技術開発
通商産業省においては、民間における環境保全技術の研究開発を「重要技術研究開発費補助金」により助成し、また民間の研究開発ポテンシャルを有効に利用し、工業技術院関係試験研究機関と民間とが、「大型工業技術研究開発費」により一体となって次の研究開発を進めた。
ア 重要技術研究開発費補助金
主として中小企業に適用する公害防止技術の開発を目的に「公害対策技術」として16件助成した。また、汚染物質を環境中に排出しないプロセスの開発を目的に「クローズドプロセス技術」として4件を、試験研究段階を終了した公害防止技術の企業化を図るため「公害防止技術企業化開発」により4件を助成した。
イ 大型工業技術研究開発費
公害防止技術開発関係の大型工業技術研究開発として、内燃機関自動車にかわる「電気自動車」の開発、排熱が少なく、環境の保全、特に冷却水による熱汚染の防止に大きく寄与する「電磁流体(MHD)発電」の開発を引き続き実施するとともに原子力エネルギーの製鉄への利用を図り公害防止に資するため「高温還元ガス利用による直接製鉄」の開発及び交通混雑の解消、自動車公害の減少、交通事故の減少等を目的とする「自動車総合管制技術」の開発を図った。
ウ 資源再生利用技術システム
都市固形廃棄物の増大による生活環境の劣化を防止し、あわせて廃棄物の再生利用を促進するための資源再生利用技術システムの開発を行った。
(3) 大学における調査研究及び学科等の新増設
人間の生存そのものに係る自然環境の悪化について基礎的知見を得るため、「人間の生存と自然環境に関する基礎的研究」を、また、東京大学生産技術研究所において、都市下における災害、公害の外乱とそれに起因する被害の検出と防護について知見を得るため「災害、公害からの都市機能の防護に関する研究」を、千葉大学において「環境科学特別研究費」により環境計画、環境保全、環境汚染の測定調査及び評価に関する研究を実施した。
以上の調査研究のほか、文部省では東京農工大学農学部に環境保護学科、東京水産大学水産学部に海洋環境工学科の新設、東京大学に環境関係講座の増設、宇都宮大学に防除研究施設、広島大学に内海水環境施設、横浜国立大学に環境科学研究センターの設置を行った。
(4) 産業公害総合事前調査
通商産業省においては、大規模な工場等が集中して立地している地域、あるいは今後集中して立地が行われると予想される地域を中心として、これら地域において発生が予想される産業公害を未然に防止するため、40年度以降、産業公害総合事前調査を実施してきた。
本調査は、大きくわけて現地調査、汚染予測、企業指導の3段階に分かれている。現地調査は、汚染予測を行う際に必要な気象データ、海象データ等のデータを現地で収集することを目的とし、汚染予測は、風洞実験、水理模型実験、電子計算機による理論拡散計算等の科学的手法を用いて実施している。これらの汚染予測を行った結果、将来環境基準を超えるような状態が予想される場合には、立地企業及び立地予定企業に対し、汚染負荷量の削減、処理施設の設置等の改善指導を実施し、将来時点においても、環境基準が達成されるよう指導するものである。
48年度において調査を実施した地域は、大気関係では北海道苫小牧東部地区等6か所、水質関係では大分県大分地区等2か所である。
(5) 各種調査研究等
通商産業省においては、工業開発に際して産業公害の発生を未然に防止するため「産業公害総合事前調査」及び「内陸工業開発総合事前調査」を、大気中の有害物質の自動計測器の性能基準と計測機器の校正法、自動車排気ガス試験方法及び標準物質の確立を標準化を図るため「工業標準化調査研究委託費」により調査研究を実施した。また、通商産業省では、公設試験研究機関の行う公害防止技術開発に対しても研究費の助成を行った。
農林省においては、引き続き都道府県農林関係試験研究機関等の行う環境保全研究に対して、また、建設省においては引き続き「建設技術研究費補助金」により環境保全技術の開発に対して助成を行った。