4 休廃止鉱山周辺の調査
(1) 概況
宮崎県土呂久鉱山周辺の砒素による住民の健康被害の問題が発端となり、全国に散在する多数の休廃止鉱山の鉱害問題が大きな問題となった。
現在、全国に散在する休廃止鉱山は5千から6千と推定され、通商産業省においては、そのうち1,050鉱山に重点をおいて実態をは握するための調査を行い、更にこのうち106鉱山については、環境庁で水質等の環境汚染調査を行った。また、通商産業省は、48年度からその他の休廃止鉱山についても県に委託して調査を行っているところである。
周辺住民の健康調査については、現に住民の健康影響上のおそれがある22鉱山周辺について実施したが、島根県笹ヶ谷鉱山の周辺において砒素中毒症と思われる者がみられたほかは、既に救済法の地域指定を受けている土呂久地区以外は健康障害が認められなかった。
(2) 島根県等の健康調査
島根県笹ヶ谷地区の住民の健康調査等については、45年8月、河川水及び飲料水から基準を超える砒素が検出されたことから、島根県は鳥取大学医学部の協力を得て45年11月から住民の健康調査を実施し、46年5月慢性砒素中毒症に特有の所見を有する者は認められなかったとの結論が得られた。
しかし、更に調査対象を拡大し健康調査をする必要が生じたので、鳥取大学医学部の協力を得て島根県笹ヶ谷周辺砒素汚染地区健康調査部会を設け、47年7、8月に健康調査を実施した。この結果、47年11月から精密検査の対象者について検診が行われ、慢性砒素中毒症と思われる者7人、疑いのある者5人、経過観察者16人が認められたとの報告がなされた。
環境庁においては、この報告をもとに、「砒素による健康被害検討委員会」において、環境汚染による健康被害者と認められるかどうか検討を行っているところである。