2 海洋汚染防止対策
(1) 規制措置の強化
48年1月1日から産業廃棄物である燃えがら、汚でい並びに廃酸、廃アルカリ、動物のふん尿の海洋投入処分の排出海域を、それぞれB海域(沈降堆積型廃棄物の排出海域として水深のある場所に帯状に設定された海域で6か所ある。)及びC海域(海洋還元型廃棄物の排出海域で、距岸50海里以遠の海域をいう。)とする厳しい規制が実施されることとなった。
(2) 監視取締体制の強化
海上保安庁は、海洋汚染の防止を図るため、前年度に引き続き横須賀、広島等の主要な海上保安部署に監視、取締要員を増員する等人員の増強を図るとともに巡視船艇及び航空機の整備増強、油排出夜間監視装置、公害監視用機動艇等各種機器の整備を行う等監視取締体制を一層充実強化した。
この結果、48年には、第3-4-2表のとおり、47年の約1.6倍に及ぶ1,818件の海上公害関係法令違反を送致した。このうち、油及び廃棄物の不法排出等の事犯は1,064件であった。
更に、海上保安庁は、47年度から海洋環境保全のための科学的調査を実施しており、48年度は、日本周辺海域における海水及び海底堆積物中の油分、COD、PCB及び重金属の調査を実施した。
(3) 海洋汚染の未然防止対策
ア 廃油処理施設の整備
船舶内において生ずる油性バラスト水、タンク洗浄水等大量の廃油を処理する湾岸における廃油処理施設の整備は47年度までに完了し、48年度においてはビルジ等少量の廃油を処理する小規模な施設の整備及び排水基準の強化に伴う施設の改良を行った。49年1月5日現在操業中のものは港湾管理者、民間運営のものを合せて50港77か所である。
イ 船舶による海洋汚染防止対策
タンカーにおいて生ずる廃油のうち、油性バラスト水、タンク洗浄水については、ロード・オン・トップ方式、陸上廃油処理施設により、また、ビルジについては油水分離装置等によりそれぞれ処理している。更に、船舶で発生する廃棄物については、船舶内において処理するための汚物処理装置、焼却炉等が積極的に採用されている。
(4) 海洋汚染防除対策
ア 港湾環境保全対策
港湾公害防止対策事業の一つとして港湾に堆積している汚でいを処理するため、事業費3,589百万円(うち国費847百万円、事業者負担1,895百万円)をもって北九州、田子の浦、大牟田港等において汚でいしゆんせつを実施した。また、48年7月に港湾法が改正され、港湾施設に廃棄物処理施設が追加され、48年度から新たに港湾管理者によるこれらの施設の整備に補助を行うこととし、廃棄物を埋立て処理するための護岸及び港湾において発生する海洋性廃棄物の処理施設を事業費11,130百万円(うち国費2,783百万円)をもって東京、大阪港等20港において整備した。
イ 一般海域の環境整備事業
海洋の汚染を積極的に除去し、海洋環境の保全を図るため、港湾区域外の特に汚染の著しい内海、内湾において浮遊ごみの掃除及び原因者不明の浮遊油の回収を国の直轄事業として実施できるよう48年7月に港湾法等が改正され、これに基づき、運輸省では、48年度において、本事業を実施するためのごみ清掃船3隻及び油回収船2隻の建造を事業費840百万円(全額国費)をもって行った。
ウ 海洋汚染防除体制の整備
事故等による油等の海洋への排出があった場合に、汚染の拡散を最小限に食い止め、汚染物質を早急に回収する等の措置が講じられる体制を整備しておく必要がある。このため、48年7月、海洋汚染防止法が一部改定され、一定の船舶や油保管施設等へのオイルフエンスや油処理剤等の備え付けが義務付けられることとなった。また、海上保安庁は、従来から全国の主要港湾に「大型タンカー事故対策連絡協議会」を設置し、官民共同で迅速に事故に対処できる体制を整備してきたが、48年度にはその内容の充実を図るとともに防除活動用資材の増強を図った。更に、防除体制の一層の充実強化のために必要な油防除用資器材の開発、油処理システムの研究を進めるため、48年度を初年度とする3か年計画で、「海洋における油防除技術の開発に関する研究」及び「油処理剤の海洋環境に与える影響の研究」を行っている。