1 海洋汚染の現況
(1)港湾
港湾やその周辺の海域は、臨海部に立地する工場又は事業場から排出される廃水、家庭排水、河川を通じて流入する汚物や汚水、ダンネージ(荷敷板)や荷粉等の廃棄物、更には船舶から排出される廃油等によって汚染され、いわゆる複合汚染の形態を示している。また、港湾は比較的海水交換の悪い半閉鎖海域が多いため、流入する汚水等によってその海底に汚でいが堆積するケースが多い。しかしながら、海洋汚染防止法、水質汚濁防止法の施行等に基づく規制の強化が講ぜられた結果、以前に比較して港湾の水質は改善の方向に向っているところもある。
(2) 沿岸海域
48年に海上保安庁が確認した我が国沿岸海域の汚染の発生状況は、第3-4-1表に示すとおり2,460件で、47年の2,283件に比べて177件の増加となっており、47年6月から海上公害関係法令が全面施行されたにもかかわらず、依然として海洋汚染発生件数は、増加の傾向にある。
48年における汚染発生状況を種類別にみると、油によるものが全体の約84%を占め圧倒的に多く、また、これを海域別にみると、大都市及び臨海工業地帯を周辺に控えて船舶交通量の多い東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海(大阪湾を含む。)に多発しており、全体の約62%がこれらの海域で発生している。一方、これら海洋汚染の約50%が船舶あるいは沿岸の陸上から不法投棄された疑いのあるもの、又はバルブ操作の誤り等機具類の取扱い不注意によるもの等人為的原因によって占められている。
このほか、海上保安庁は、48年6月から半年間、タンカーが排出する廃油が凝固してできると推定される廃油ボールの漂流漂着状況を調査したが、この調査により廃油ボールの漂流漂着は、前回の調査(46年6月から1年間実施)に比べて全体的に減少傾向を示しているものの、沖縄諸島から南九州、伊豆諸島に至る太平洋岸への漂着は相変わらず多く、また、黒潮流域にも、微細な油塊が多く漂流していることが確認された。
(3) その他の海域
気象庁では、47年度から日本周辺及び西太平洋海域の全般的汚染(バックグラウンド汚染)状態の定期観測を実施しているが、海洋汚染物質としての有害重金属(水銀、カドミウム)については沿岸域に比較的高濃度のものが認められた。また、海洋汚染に関連の深いアンモニア、COD、有機リン等については、海洋系と密接な関連を有しており、南半球よりも北半球の方が、これらの値が大きいことが観測された。