2 最近における水質汚濁の要因
最近における水質汚濁の基本的な要因は、近年の急速な経済成長に伴う工業排水の増大及び人口の都市集中による生活排水の増大とこれに対応する下水道整備の立遅れにより水域の浄化能力の限界を超える排水が公共用水域に流入することである。
工業用水(淡水)の1日当たりの使用量をみると41年の3,201万トンから、46年には4,194万トンへと31%の増加を示しており、これを地域別にみると、京浜、阪神、中京の三大都市圏の伸びが比較的低いのに対し、その隣接地域及び外周地域の増加率が高い(第3-1-3表)。これらの振興地域における工業の伸びは都市部からその周辺部に汚濁の広がりをもたらすこととなった。更に、工業用水の使用量を業種別にみると、用水型工業のうち、汚濁負荷量の大きい食品、紙・パルプ及び化学工業の全体に占める割合は低下しているが、46年には59%であり、なお、高い割合を占めている。(第3-1-4表)。特に、紙・パルプ及び食品製造業は、特定地域への集中がみられ、ヘドロの堆積等を誘発して、当該地域における深刻な社会問題をもたらした事例もある。
しかし、近年におけるこれら用水型工業の用水の使用量の内訳では、主要な汚濁発生源となる製品処理水及び洗浄水の使用量の伸びは頭打ちとなっており、その反面回収水の使用量の増加が顕著となっている。この傾向は、水質汚濁の防止という観点から望ましい方向といえる。他方、最近10か年の人口と家庭用の水道の給水量の動向を地域的にみると東京、大阪、名古屋等の周辺の新興住宅地域における伸びが著しいことが特徴的であり、最近5か年では、給水量は1.5〜2.3倍にも増加している(第3-1-5表)。家庭の生活排水も、ほぼその割合で増加していると考えられる。
これに対する我が国の下水道普及率(下水道整備面積/市街地面積)は、47年度末で25%に過ぎず、また、50年度末を目標とする第3次下水道整備計画が完了した時点の見込みでも約38%であり、これは欧米諸国の60〜90%と比較して著しく立ち遅れている。