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第2節 

5 監視測定体制等の整備

(1) 国設大気測定網
 大気汚染物質のうち、現に規制の対象となっている物質のみならず、他の物質を含めて大気汚染の態様を全国的な視野では握するとともに環境基準の設定、公害防止計画の策定等に必要な基礎資料を得る目的で全国の主要地域15か所に国設大気汚染測定局が設置されている。その設置場所は、札幌、仙台、鹿島、市原、東京、川崎、新潟、名古屋、大阪、尼崎、松江、倉敷、宇部、北九州及び大牟田の各都市である。この測定局には、いおう酸化物、浮遊粒じん、窒素酸化物、オキシダント、一酸化炭素、炭化水素、気象(風向・風速・温度・湿度)の各種自動測定装置、自動ガス採取装置、粒じん採集器(ハイボリウムエアサンプラー、ローボリウムエアサンプラー)及びデータ処理装置が設置されており、このデータをもとに大気汚染要因の解析、究明が行われている。
 また、上記15か所とは別に潜在汚染度を判断するバックグラウンドデータを得るため、48年度において北海道野幌及び茨城県筑波に国設環境大気測定局を設置した。この測定局には、国設大気汚染測定局に設置しているものと同種の測定機器のほかに、弗化水素、硫化水素、雨量、日射量及び紫外線量の各種自動測定装置を設置している。
 自動車排出ガスについても国設自動車排出ガス測定局が東京都内の3か所に設置されており、一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素、浮遊粉じん等の自動測定装置により自動車排出ガスによる大気汚染の実態解明に必要なデータの収集が行われている。
 国において設置しているこれらの測定局は主目的のデータ収集のみならず、地方公共団体において整備される大気汚染測定網における測定方法の標準化等を図るために必要な資料を提供しており、大気汚染防止策を確立するため多くの役割を有している。
 なお、全地球的規模の大気汚染(大気バックグラウンド汚染)状態を常時観測するため、岩手県三陸町の気象ロケット観測所に必要な施設を整備したほか、地方公共団体の行う大気汚染対策に資するため、広島に大気汚染気象センターを設置した。
(2) 地方大気汚染監視測定体制
 地方における大気汚染に係る監視測定は、大気汚染防止法第22条の規定に基づき、大気汚染の常時監視義務を有する都道府県及び同法施行令第13条の規定に基づき、当該事務の委託を受けた市において行われている。地方公共団体の大気汚染監視網においては、各測定局に設置されている各種の自動測定装置による測定データ(1時間を単位とする周期計測)をテレメーターシステムにより毎時監視センターからの呼出信号で自動的に伝送する方式が増えてきている。センターにおいては各種の伝送データをデータ処理装置によって集計記録し、同時に汚染状況表示盤にその時点の管内全域にわたる汚染状況が造形的に表示され、大気汚染の集中的な常時監視が可能となっている。また、高濃度汚染が発生した場合における緊急時の措置を的確に講ずるため同時通報装置を併設し、関係企業に対する緊急時の際の協力要請伝達等の各種業務を迅速化し、大気汚染の防止に効果をあげている。
 また、この大気汚染監視網は日々のデータ集積によって現に設定されている環境基準に対する地域の適合状況の比較検討あるいは各地域ごとに定められる排出基準の設定時に必要なデータを提供するもので、大気汚染防止の実効を期するために多くの役割を有している。
(3) 予報体制
 大気汚染防止法に定められた都道府県知事の行う緊急時の措置等に協力するため、既設の東京・大阪・名古屋大気汚染気象センターに加え、新たに広島地方気象台に大気汚染気象センターを設置するとともに既に大気汚染気象予報業務を実施している銚子、横浜、京都等の6地方気象台に加え、岡山気象台についても予報業務に必要な設備を整備することにより、地方自治体の行う大気汚染防止対策に資するための体制を強化した。

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