3 光化学反応による大気汚染対策の推進
(1) 光化学大気汚染の現状
45年7月に東京で光化学大気汚染によると思われる被害事例が発生して以来、国や地方自治体ではオキシダントの監視測定体制の整備に努めるとともにオキシダント緊急時対策要綱を定め、オキシダント濃度に応じた予報、注意報、警報等を発令し、発生源対策と住民対策を実施してきた。
すなわち、45年には東京と大阪にそれぞれ1局にすぎなかったオキシダント測定局は、47年3月には107局となり、更に48年3月には243局になった。その結果一部の地方を除けば、ほぼ全国においてオキシダントの監視測定ができるようになった。
監視測定体制の整備に伴い、予報や注意報(オキシダント濃度1時間値0.15ppm以上)の発令回数も急速に増加し、48年には4月から10月のいわゆる暖候期に、全国21都府県で328回のオキシダント注意報が発令された。このうち48年に新たに注意報が発令された県は宮城県、栃木県、群馬県、静岡県、滋賀県、広島県及び香川県の7県で、大都市のみならず、地方の中小都市においても光化学大気汚染がみられるようになった(第2-2-5表参照)。
光化学大気汚染の要因物質である窒素酸化物や炭化水素の監視測定体制は、次第に整備され、これらの測定データの解析、東京湾地域や大阪湾地域等における大気調査、スモッグチャンバーによる実験等によって汚染物質相互間の関係や、PAN、アルデヒド、アクロレイン、ミスト等の存在も確認され、オキシダントの発生と気象条件の関係や健康影響、植物影響等の調査も着々と進められて、我が国における光化学大気汚染の実態も徐々に明らかにされつつある。
(2) 光化学大気汚染対策
光化学大気汚染対策の重要性と緊急性にかんがみ、47年に設置された関係省庁から構成される光化学スモッグ対策推進会議の決定の線に沿って、48年度は次のような対策を推進した。
ア 環境基準の設定
光化学反応による大気汚染の主要な要因物質としての窒素酸化物と二次生成物である光化学オキシダントの環境基準が48年5月に設定された。窒素酸化物とならんで光化学オキシダントの要因物質である炭化水素についても環境基準を設定するための検討を進めている。
イ 固定発生源対策
窒素酸化物の環境基準の設定に伴い、工場、事業場等の固定発生源から排出される窒素酸化物についての排出規制を実施した。
炭化水素については、排出態様が複雑であることもあり、排出実態の調査とあわせて排出規制について検討を進めている。
ウ 移動発生源対策(4 自動車排出ガス対策の推進の項を参照)
エ 予報及び監視体制の整備
光化学反応による大気汚染の発生を予報する体制の強化を図るため、既に設置されている東京、名古屋の大気汚染気象センターに加え、新たに広島地方気象台に大気汚染気象センターが設置された。また、光化学反応による大気汚染の発生を監視し、発生した場合には、所要の措置をとるため、国及び地方公共団体の常時監視体制の強化を図った。
オ 保健対策
光化学反応による大気汚染の健康への影響については未解明の分野が多く残されているので、調査研究を推進し、健康被害に関する診断基準等の確立を図るため、疫学的臨床医学的調査を行った。
カ 調査研究の実施
光化学反応による大気汚染はその発生機構、影響等に関しまだ解明されていない問題も多く残されているので、国の試験研究機関を中心に、測定技術、生物への影響等についての研究を行った。
また、光化学反応による大気汚染の実態は握のため環境庁において、気象条件、環境汚染状況等の地域的な差異を勘案して、東京湾地域に加えて大阪湾をも対象地域にして、光化学スモッグの発生状況、健康影響等の総合的調査を実施した。
キ 国際協力
OECD(経済協力開発機構)大気管理セクターグループの会議が47年9月に日本で開催された際、我が国の提案で光化学スモッグに係る専門委員会が設置された。
また、アメリカはロスアンゼルス地区等における光化学スモッグについて多くの経験を有していることにかんがみ、48年6月に光化学スモッグに係る日米会議が開催され研究協力の推進を図った。