2 環境保全長期計画の策定
我が国の公害問題が極めて急激な形で現れてきただけに、これらの施策はややもすると被害の後追いをすることとなり、そうでなくとも各施策間の有機的一体性に欠けるきらいがあった。今後の環境行政は、これまで投ぜられた各方面の政策努力の積重ねのうえに、こうした点を是正し、長期的、総合的な視点のもとに計画的に推進されなければならない。
このような観点から、個々の行政と民間汚染防除努力に対する目標となる長期的な環境保全計画を策定し、これに基づいて施策を強力に推進しなければならない。
環境保全計画においては、まず、我が国の環境をどの程度の水準に保つべきかが問題となる。人の健康を保護し、良好な生活環境を保全する水準は、現行環境基準を基本に定められることとなろうが、更に将来の国民の環境への欲求の程度も考慮して設定される必要があろう。
次に、望ましい環境保全の水準と現実の汚染状況とのギャップをどのように埋めるか、その手段が計画的に検討されなくてはならない。
まず、新規に発生する汚染に対しては、規制措置等により対処することとなるが、その場合、目標の水準を計画期間に達成するためのレベルに汚染排出を規制するのに必要な公共、民間の各セクターにおける公害防止投資の規模等が明らかにされなければならない。これに関連し、望ましい環境水準下における産業構造、生活様式、エネルギー消費の姿も検討されるべきである。
一方、全国の蓄積性汚染を浄化するための国土浄化事業も計画的に進められなくてはならないが、このためには、まず、全国の蓄積性汚染の状況を総点検により明らかにする必要がある。これまでにも、国、地方公共団体により、水銀、PCB等に関する公共用水域の底質調査、土壌汚染防止対策細密調査、休廃止鉱山鉱害調査等が継続実施されてきたが、長期計画の策定に当たっては、これらの調査結果を集大成するとともに更に、必要な調査を行い全国の蓄積性汚染の状況を的確には握しなければならない。そして、総点検の結果に基づき、必要な地域において国土浄化事業が計画的に実施されることとなるが、そのためには、現行の港湾公害防止対策事業、公害防除特別土地改良事業、休廃止鉱山鉱害防止対策事業等各種の防除事業が計画的、整合的に推進されなければならない。
長期計画においては、環境政策上の目標及びその達成手段と国の他の経済社会政策上の目標との関係を吟味する必要があり、環境保全を前提とした最も望ましい資源配分を達成するために、こうした関係を定量的には握する計量モデル(環境保全モデル)の開発を急がなくてはならない。
なお、環境保全長期計画の必要性は、既に48年2月閣議決定をみた経済社会基本計画(48〜52年度)のなかでうたわれており、52年度までの早い時期に策定すべく現在準備を進めている。