1 高速輸送機関による公害の防止
航空機、新幹線等近年の高速輸送機関の運行拡大は、短時間で多数の人々を遠隔地に輸送するという面で多大な利便をもたらしてきたが、同時に騒音、振動等の公害の誘因にもなってきた。
高速輸送機関は公共的な輸送手段として重要な機能を有してはいるが、同時にその建設、運行に際して生活環境に与える悪影響を十分防止していかなければならない。
これら輸送機関による公害の防止を図るため、今後、交通体系のあり方の検討を含めて総合的な行政の強力な展開が必要とされるが、環境政策の立場においても公共サービスに対する環境保全の問題を一層真剣に考えていかなければならない。
航空機騒音に関しては、昨年12月環境基準が設定されたわけであるが、この環境基準値を達成するために、各種の音源対策を強化拡充するとともに空港周辺の土地利用を環境保全面から抜本的に見直し、しゃ断緑地の確保、住居移転、防音工事等適切な対策を強力に進めていかなければならない。
今後空港建設に当たっては、立地についても建設後の騒音問題を十分考慮し、空港周辺の土地利用及び建築制限等の規制措置について検討する必要がある。
次に、新幹線については、その走行に伴い発生する騒音は著しく、沿線の一部の地域住民に対し大きな影響を与えている。このような被害を防止するためには、新幹線の騒音に係る環境基準の設定を急ぎ、この基準に対応した総合的な対策の推進が必要である。すなわち音源対策としては、防音壁の設置及び改良のほか、橋梁等の線路構造及び車両の改良等の措置を講ずるとともに周辺の住民に対する対策としては、騒音の現況、地域の態様等を勘案して既設の住居等に対する防音工事の助成、建物の移転等の措置を実施することが必要である。また航空機と同様その運行の態様についても環境保全面からの総合的な検討が必要となってきている。