前のページ 次のページ

第2節 

2 公害保健対策と指導の強化

 最近、休廃止鉱山による砒素問題など各地で有害物質による健康被害の問題が発生し、地域住民の不安を助長している。このような事態に対処して、国は、関係地方公共団体と協力し、健康調査や環境汚染調査を実施し、実態の解明につとめるとともに、その未然防止を図ることとしている。とくに健康被害の問題は緊急を要する問題であると同時にその対策は長期的観点からみて納得のいくものでなければならない。
 このため、各種環境汚染物質による人の健康被害に係る診断方法および診断基準の設定のための検討を47年度以降進めており、とくに蓄積性物質のうち緊急度の高いものから逐次設定することとしている。
 微量重金属等による健康被害は、これらの有害物質の生態系の場における生物濃縮の影響によって起こる二次的な生物汚染に起因する場合が多いが、その経路や人体への影響の機序が不明確であるため、今後、さらに調査研究を要する点が多く、40年度以降、水銀およびカドミウムについては必要な調査研究を行なうとともに、その成果に基づいた環境汚染暫定対策要領により対処してきている。また47年度より、PCBについても調査研究を進めており、48年度は、さらにフタル酸エステルについても調査研究を進めることとしている。
 大気汚染の人体影響の総合指標についての基礎的資料を得るため、ばい煙等による環境汚染の人体影響を疫学的、経時的に調査し、汚染の態様と人体影響との関連性の把握、また今後、予測される汚染物質による影響の資料収集等を目的とした調査を引きつづき行なうこととしている。
 なお、有害物質による環境汚染を予知し、汚染の拡大や健康被害の未然防止を図るため、資源の採掘、人工新物質の生産から日常の利用、処分にいたる流れの中で体系的な汚染のチェックが必要となる。このようなことから、新汚染物質をあらゆる分野から予測し、健康被害の未然防止が図れるシステムの開発を行なうための必要な調査研究を企画することとしている。

前のページ 次のページ