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第2節 

9 その他の環境保全に関する主な調査研究

(1) 公害による健康影響の調査研究
 環境庁においては、47年度に引き続いて水俣病、イタイイタイ病および大気汚染の影響による呼吸器疾患等について、診断、治療方法等の研究を行なうこととしているが、これらの研究の実施にあたっては、それぞれ関連の深い研究者を集めて研究班を組織し、研究者相互の連絡を密にし、汚染から治療まで総合的に研究を進めることとしている。
 また、カドミウム、ひ素等の関係については、地域住民に健康被害が疑われる場合には関係県を助成し、健康被害調査を行なうため、48年度より新規に「健康被害調査費補助金」を計上した。
(2) 調査研究の助成
ア 重要技術研究開発費補助金
 通商産業省では、民間における環境保全技術の研究開発を助成するため、重要技術研究開発補助金を交付しているが、48年度においては、公害防止技術クローズド・プロセス技術の開発に対する助成を拡充するとともに、公害防止技術の企業化開発を促進するための新たな助成措置を講ずることとする。
(ア) 公害対策技術開発補助
 重要技術研究開発費補助金の公害対策技術開発枠(補助率3/4)は47年度に対し、1億円増の4億円の予算が計上され、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭等の防止技術および廃棄物処理技術について、主として中小企業に適用できるものを中心に助成する。
(イ) クローズド・プロセス技術開発補助
 クローズド・プロセス技術開発枠(補助率2/3)は、47年度に対し4億5千万円増の8億2千万円が計上され、生産技術の本質的な無公害化をめざした技術体系のクローズド化をはかるため、クローズド・プロセス技術の開発を促進する。48年度においては、47年度から継続する「ガス化脱硫プロセス」「非水銀カ性ソーダ製造プロセス」「無公害紙パルプ製造プロセス」の他、新規に「非水染色加工プロセス」を加えた4テーマの技術開発を助成する。
(ウ) 公害防止技術企業化開発補助
 公害防止に対する国民の要請の高まりに対応するためには、研究段階の終了した公害防止技術について、早急にその実用化を図っていく必要がある。しかしながら公害防止技術は一般的に企業化開発段階における技術的、経済的リスクがきわめて大きいためにその実用化が遅れているのが実状であり、このようなリスクを担保し、企業化を促進させるための強力な助成策が必要である。このため新たに公害防止技術企業化開発枠を設け、排煙中のNOx除去技術、重油の直接脱硫技術等緊急性が高く、技術的、経済的波及効果の大きい公害防止技術の企業化開発に対し、所要資金の1/2を補助するため、3億4千万円の予算が計上された。
イ その他の補助金
 農林省では引き続き都道府県農林関係試験研究機関等の行なう環境保全に関する研究に対して、また、通商産業省においては公設試験研究機関の行なう公害防止技術開発に対して研究費の補助を行なうこととしている。
 また、建設省においては、昭和47年度に引続き、建設技術研究補助金により環境保全技術の開発を推進するための研究に対して助成を行なうこととしている。
(3) 各種調査研究等
 通商産業省では、48年度から、新たに、地域開発に伴い建設されつつある内陸工業開発地域で、今後産業公害が発生することにならないよう、それを未然に防止するために必要な資料を得るため「内陸工業開発総合事前調査」により、総合的科学的な調査を行なうとともに、関係企業に対する指導を行なうこととしている。このほか、「工業標準化調査研究委託費」により、48年度においては、大気中のオキシダント、フッ化水素および排ガス中の悪臭物質などの有害物質に対する自動計測機器の性能基準ならびに、これら計測機器の校正方法の確立および標準化のための調査研究を行なうとともに、大気汚染の一大元凶である自動車排出ガスの試験方法の標準化のために必要な走行実験等の調査研究を行なうこととしている。
 文部省では、東京農工大学農学部に環境保護学科、東京水産大学水産学部に海洋環境工学科の新設、東京大学に環境関係講座の増設、宇都宮大学に雑草防除研究施設、広島大学に内海水環境施設、横浜国立大学に環境科学研究センターの設置を行なうこととしている。また、前年度に引き続き東京大学生産技術研究所において「都市における災害公害の防除に関する研究」、千葉大学において「環境科学特別研究経費」により環境計画、環境保全、環境汚染の測定調査および評価について総合的な研究を進めることとしている。

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