前のページ 次のページ

第2節 

2 水質汚濁

 環境庁は、48年度も引き続き水質汚濁による環境悪化の防止を図るため、水質汚濁防止に関する調査研究を積極的に推進する。すなわち、国の試験研究機関等が実施する水質汚濁防止に関する研究の総合的推進を図るため、近年ますます必要性が増大している研究テーマのうち、各機関相互の協力体制が研究の成果を確保するためにより効果的と考えられるものについては、関係機関の組織的研究体制をとることとし、まず「排水処理の高度化」および「瀬戸内海等沿岸海域の汚染防止」に関する2つの総合研究プロジェクトを発足させる。
 排水処理の高度化に関する総合研究では、各種の有機性排水および重金属含有排水等をより効率的に浄化無害化するとともに、さらに、高度化処理による排水の用水化、有用資源の回収を目ざすため、積極的に研究開発を進めることとしている。また、この総合研究の中には、これらの排水処理技術をシステム化し、電子計算機により排水を常に最適な状態で処理するための管理技術の研究を進めており、これまでの基礎的研究成果をもとに、48年度は石油精製工場排水について実用化のための研究を実施することとしている。
 瀬戸内海等沿岸海域の汚染防止に関する総合研究は、瀬戸内海等の沿岸海域の深刻な汚染問題に対処するため、臨海工場、河川から流入する汚濁物質による沿岸海洋の汚濁現象及び汚濁が海洋生物へおよぼす影響、さらに、これらの汚濁物質が浄化されて行く機構を瀬戸内海大型水理模型によるシミユレーション実験やフィールド調査研究によって究明するとともに赤潮の発生予察および防除抑制技術の開発を推進し、沿岸海洋保全のための適切な方策を確立しようとするものである。また、海洋環境に出来るだけ悪影響を与えずこれを浄化するための浚渫方法の研究、タンカー事故等により生じる大量流出油の速やかな回収方法の研究など積極的な海洋環境浄化のための研究も同様に実施することとしている。
 なお、この総合研究と密接な関係がある調査としては、広域にわたって生じている瀬戸内海、東京湾、伊勢湾などの深刻な水質汚濁現象に対処する水質汚濁総合調査があり、また、最近、火力発電所や原子力発電所から排出される温排水が生物に与える影響が懸念されているので、前述の総合研究において生物への影響に関する研究を実施するが、同時に温排水の拡散に関する調査を行ない、温排水の排出基準設定のための基礎的資料を得ることにしている。
 その他水質汚濁防止のための研究として、染色工程における非水化を目的とした抜本的な新プロセス開発のための研究、排水処理に有効と思われる各種の物理化学的処理法の有効性と効率化を検討する基礎的な研究および水質汚濁物質を精度よく適確簡便に把握するための計測技術の改良開発研究を実施することとしている。また、水質汚濁防止の調査としては、水の自浄能力、水質変化予測方法の確立、底質汚濁改善、地下水汚染防止等を行なうこととしており、これらの調査研究は、それぞれ今後の水質汚濁防止対策をすすめる上で重要な役割を期待されているテーマである。

前のページ 次のページ