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第2節 中小企業公害対策と助成策

 公害・過密化現象などの環境問題の深刻化に対処して、中小企業も積極的に対策を講じつつあるが、中小企業は資金調達力や適切な防止策についての知識に乏しく、また、中小企業に適した防止技術や機器の開発が十分でないばかりか、適切な移転先が確保できないなど種々の制約があり、完全な公害防止対策を講ずることが困難な状況にある。このため、中小企業が公害防止を適切に行ないうるように金融、技術開発および相談・指導等の各面において、次のような措置を講ずることとしている。
(1) 中小企業の公害防止設備の設置等に必要な資金の円滑な供給を図るため、
ア 中小企業金融公庫、国民金融公庫の公害防止貸付について、貸付枠の拡大、貸付限度の引上げ、融資対象の拡大など制度の拡充、強化を図ることとする。また、公害型業種からの転換の円滑化を図るための事業転換貸付についてもその活用を図ることとする。
 さらに、48年度から中小企業の公害防止移転の円滑化を推進するため、中小企業金融公庫、国民金融公庫において過密公害防止移転等貸付を創設することとし、過密公害を原因として中小企業が移転する場合の円滑化(工場環境の質的向上を含む。)を図る等のための融資を行なうこととしている。
イ 中小企業者が組合組織を通じ共同して公害防止にあたる場合にあっては、中小企業振興事業団の共同公害防止事業融資(融資比率;80%、金利;無利子)が用意されており、48年度においてもその融資規模の大幅な拡充を図ることとしている。また、組合組織を通じて中小企業者が公害防止機器を共同購入する場合に高度化資金(融資比率;65%、金利;年2.7%)を利用できる道を開いた公害防止設備リース事業の積極的活用を期することとしている。
ウ 公害防止事業団の建設造成事業および貸付事業の拡充、強化を図ることとし、事業規模の大幅な拡充のほか、廃棄物処理業者(利用業者を含む。)の融資対象への追加を行なうこととしている。
(2) 中小企業に対する公害防止指導を強化するため、
ア 中小企業に対する診断指導事業の実施主体である都道府県の中小企業総合指導所に公害専門診断指導員を設置し、中小企業の公害防止の役に立てているが、48年度においては大幅な増員を図り診断指導事業の公害面での体制をととのえることとしている(23人から47人に増員)。
イ 公害防止の相談窓口として各地の商工会議所が産業公害相談室を設置し、中小企業者への助言を行なってきている。48年度においては、国の助成対象を38商工会議所(日本商工会議所を含む。以下同じ。)から41商工会議所に拡大し、その事業活動の円滑化を図ることとしている。
ウ 48年度から、都道府県の公設試験研究機関が主体となって、公害防止に関する専門家、前記の公害防止専門診断員および試験研究機関の職員でチームを編成し、公害発生のおそれのある企業に対し、公害防止技術についての巡回技術指導を行なうこととしている。
エ 公害防止に関する情報の提供を円滑化するため、中小企業振興事業団において公害防止技術の所在リスト、公害防止指導マニュアルの作成等を行ない、中小企業者、指導機関等へ提供することとしている。
(3) 中小企業向けの公害防止技術の開発を促進するため
 中小企業が独自で行なう公害防止技術の開発および企業化を促進するための技術改善費補助金制度の公害特別枠の拡大とともに、中小企業金融公庫の国産新技術企業化等貸付の拡充および公害防止面への重点的活用を図ることとしている。
 また、国公立試験研究機関の中小企業向け公害関係技術開発の充実を図ることとしている。

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