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第2節 融資、助成、税制措置等

(1) 公害防止事業団
ア 事業団の業務
 昭和40年10月に設立された公害防止事業団は、以下に掲げる業務を行なっている。
 ? 造成建設事業
   共同公害防止施設の設置、譲渡
   共同利用建物の設置、譲渡
   工場移転用地の造成、譲渡
   共同福利施設の設置、譲渡
 ? 貸付事業
   共同公害防止施設の設備資金の融資
   個別公害防止施設の設備資金の融資
 ? 公害に係る健康被害救済特別措置法に基づく納付業務
イ 47年度の事業
 47年度の事業団の事業規模は590億円、資金規模は578億円、財政投融資は471億円が認められ、大幅に拡大された。その内訳は次のとおりである。
 事業規模    590億円(46年度 400億円)
 造成建設事業  140億円(46年度 140億円)
 貸付事業    450億円(46年度 260億円)
 資金規模    578億円(46年度 278億円)
 財政投融資   471億円(46年度 243億円)
 その他     107億円(46年度 35億円)
 その後、公害防止施設の緊急設置を迫られている工場、事業場からの需要に応ずるため、造成建設事業に60億円、貸付事業に50億円の事業規模の追加が認められ、事業規模等は次のようになった。
 事業規模    700億円
 造成建設事業  200億円
 貸付事業    500億円
 資金規模    630億円
 財政投融資   520億円
 その他     110億円
 上記の事業規模による事業団の事業実績は、第8-2-1表および第8-2-2表のとおりである。また、公害対策の進展に対応するために、造成建設および融資対象施設として、悪臭防止施設および産業廃棄物処理施設を新しく追加することとした。
(2) その他の政府関係機関による融資
ア 中小企業設備近代化資金による融資
 中小企業設備近代化資金は、中小企業近代化資金等助成法に基づき中小企業者を対象に、従来の融資対象施設である汚水処理設備、ばい煙または粉じん処理装置、騒音防止設備、工業用水道への転換設備、悪臭処理設備、産業廃棄物処理設備、特定物質処理装置および海水汚濁防止装置等に加え、47年度から海水汚濁防止装置の範囲を拡大し、汚物処理装置(人体排泄物を浄化処理する装置に限る。)に対しても融資できることとした。
イ 中小企業金融公庫による融資
 中小企業金融公庫による公害防止施設に対する融資は、中小企業者を対象として、40年9月から行なわれている。融資対象は、汚水処理施設、ばい煙等処理施設、粉じん防止施設、騒音防止施設、産業廃棄物処理施設、悪臭防止施設、工業用水道等への転換施設、個別工場の移転資金(土地、建物、設備等)および公害防止事業費事業者負担法に基づく事業者負担金であるが、47年度には貸付限度を一般貸付限度に3,000万円(46年度1,000万円)上のせした額に引き上げたほか、金利についても、47年10月1日以降の貸付け分については、3年間6.2%、4年目以降6.7%(46年度3年間6.5%、4年目以降7.0%)と引き下げられた。
 また、公害防止貸付枠を80億円(46年度当初40億円、補正追加15億円)に拡大した。
ウ 国民金融公庫による融資
 45年度から国民金融公庫においても、公害防止施設に対する特別融資制度が創設された。融資対象は従来の汚水処理施設、ばい煙等処理施設、粉じん防止施設、騒音防止施設、産業廃棄物処理施設、悪臭防止施設、工業用水道等への転換施設および公害防止事業費事業者負担法に基づく事業者負担金に加えて47年度から個別工場の移転資金(土地、建物、設備等)を融資対象の範囲としたほか、中小企業金融公庫と同様に47年10月1日以降の貸付け分について3年間6.2%、4年目以降6.7%(46年度3年間6.5%、4年目以降7.0%)と金利の引き下げを行なった。
 また、産業安全衛生・公害防止施設等整備資金枠を産業公害防止施設等整備資金貸付枠に改め20億円に拡大した。
エ 中小企業振興事業団による融資
 中小企業振興事業団による助成対象事業に、従来の共同汚水処理事業のほか、47年度からばい煙、粉じん、騒音、産業廃棄物等の共同処理事業を加えるとともに、公害防止機器を組合員に買取予約付リースを行なう特定組合を対象として融資する制度が創設された。(融資比率65%、金利2.7%、償還期間据置期間2年を含み12年)
オ 日本開発銀行による融資
 日本開発銀行においては、公害防止枠を450億円に拡大し、融資対象施設として従来の重油脱硫、ガソリン無鉛化(公害予防施設)、ばい煙防止、汚水処理等、海水油濁防止、排煙脱硫および廃棄物処理(公害防止施設)の施設に、47年度から液化天然ガス発電施設、無公害工程転換設備(無振動鍛造機、無振低騒音鋳型造型機、二段接触式硫酸製造設備および硫酸焼鉱ペレット製造設備)を加えた。また、このほか、公害防止に寄与するものとして、公害過密地域からの工場分散に対する融資、地域冷暖房設備や廃車処理事業に対する融資、国産技術振興資金による融資を行なうこととした。
カ 公害防止機器リース制度
 この制度は、国民生活関連機器リース金融措置の一環として、45年度に発足したもので、公害防止機器のリースを行なうリース会社に対し長期信用銀行3行から融資を行なうものである。
 リース対象物件は、?ばい煙処理機器、?粉じん処理機器、?排ガス処理機器、?排水処理機器、?油水分離機器、?汚泥脱水機器、?砂利汚濁水処理機器、?産業廃棄物処理機器、?公害防止用測定機器および?騒音、振動または悪臭の防止機器である。


(3) 税制上の措置
 公害防止用設備について初年度2分の1の特別償却制度が設けられているが、このうち適用期限の到来する重油脱硫設備および船舶廃油処理設備について、仕様を改訂して適用期限を延長するとともに、従来廃油および廃プラスチックに限っていた焼却装置を産業廃棄物一般に範囲を拡大した。
 また、公害防止施設の稼動に要する費用、委託処理費等の公害防止費用を所得の変動にかかわりなく、円滑に支出するため、公害防止準備金制度を創設した。これは、公害防止費用の負担が大きく、かつ、所得金額の変動が大きいものとして定められた指定事業を営む企業は、公害防止費用の支出に備えるため、指定事業に係る収入金額の0.3%(所得変動の著しい特定業種については0.6%)に相当する金額(所得金額を限度とする。)を非課税で積み立てることを認め、これをとりくずして公害防止費用の支出にあてるほか、積立後3年を経過したものは益金に算入するものである。
 固定資産税については、悪臭防止施設、産業廃棄物処理施設(従来は廃プラスチック類焼却装置のみが対象であった。)およびごみ処理施設について新たに非課税とし、従来軽減措置の適用があった砂利汚濁水処理施設および廃油処理施設を非課税とし、さらに、粉じん防止施設、公害関係計測機器を非課税の範囲を拡大して対象とした。
 また、低いおう化対策を促進するため、発電用ボイラーまたは鉄鋼の圧延用加熱炉の燃焼用揮発油について、揮発油税および地方道路税を3年間免除することとした。
 この他、公害の原因となる因子を極力発生しないような生産プロセスの開発普及が、根本的な公害対策の一つであると考えられるところから、このような設備について重要産業用合理化機械等の特別償却制度(初年度取得額の4分の1)の対象に加えた。

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