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第2節 

7 自然保護等

 自然環境保全に関する科学技術開発として最も重要な課題は、自然生態系の解明と環境悪化のそれに与える影響の解明である。このため文部省において「生物環境制御」「人間の生存にかかわる自然環境に関する基礎的研究」など自然環境の解明と汚染物質の自然環境中における流れおよびそれが生物に与える影響の研究を科学研究費補助金をもって実施した。また、わが国における自然環境の大部分が農林水産業の生産環境であり、自然環境の保全がこれら第1次産業の生産の動向に深いかかわりをもっていることを考え、あらたに農林省において、「農林水産生態系における汚染物質循環と指標生物に関する総合的研究」に着手した。この研究は土壌おびよ水域の生態系における汚染物質の循環等を明らかにしこれら環境中における汚染物質の受容能力を把握するための基礎研究および生物の利用による環境汚染を判定する手法の技術開発を行なおうとするものである。
 環境汚染の人間および生物に与える影響のなかでも長期的な影響、特に遺伝形質に与える影響は、単に影響が当代の障害にのみとどまらず、将来の生物の生存にもかかわる点において大変重要であり、今後の環境科学研究の重要課題のひとつとなっている。環境庁では、この点を考慮し幾つかの国立試験研究機関にまたがる「各種環境下における生物の生態遺伝的変化に関する総合研究」を組織し、この問題に取り組むこととした。
 また、環境庁においては国立公園などすぐれた自然地域の保全に関する研究についても積極的に推進することとした。特に、近年大きい社会的問題となる事案の多い自然公園内に及ぼす諸種の影響を解明し、道路建設の当否も含め、有効な対策を講じるための研究に着手した。
 さらに水域の汚濁についても、その範囲は単に都市および周辺水域のみならず、深山の湖沼、河川やすぐれた海洋景観をもつ地域に拡大されつつある現状にかんがみ、これに対応する措置として、国立公園内の湖沼の水質について総合的な調査研究を実施し、保全基準の指針を得たほか、海洋生態系の変化の把握と汚染物質による海洋生物に対する影響解明の研究に着手した。

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