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第2節 

4 都市公園の整備等

(1) 都市公園
 今日環境問題の一つとして、自然保護対策と併せて、都市における緑とオープンスペースの急速な減少が問題となっている。昭和30年代以降の急激な人口、産業の都市への集中は、一方で市街地内部の社寺境内地、あき地等の身近かな緑とオープンスペースの喪失を持たらすとともに、他方で市街地周辺部の山林、原野等の無秩序な蚕食をもたらし、都市環境の悪化をまねいている。
 このような情勢において、都市における緑とオープンスペース、とりわけその中核となる都市公園を確保し、新たに建設することは現代の緊急課題である。
 都市公園は、都市を緑化し、都市公害を緩和し、災害時の避難場所を提供するばかりでなく、児童、青少年の健全なレクリエーションの場や、市民のコミュニケーションの場を与える等の多目的機能を有する基幹的な生活環境基盤施設である。しかるに、わが国における都市公園の現状は、46年度末で約25,000haであり、これは都市計画区域内人口1人あたり2.8m
2
にあたる。欧米の諸都市、たとえばニューヨーク19.2m
2
/人、ロンドン22.8m
2
/人等に比較して、わが国はかなりの低水準にあるといえる。
 このため、都市公園を緊急かつ計画的に整備するため、47〜51年度を事業期間とし、一般公共事業3,200億円、地方単独事業4,800億円、予備費1,000億円、総額9,000億円の内容を持つ都市公園等整備五箇年計画が定められた。
 47年度は、この五箇年計画の初年度として、国費11,976百万円(補正後17,919百万円)を持って、下記を重点に従来以上に積極的な事業の推進を図った(第6-2-16表)。
? 都市環境改善のための基幹公園の積極的整備
? 公害災害対策としての緩衝緑地等の緊急整備
? 広域レクリエーション需要に対処するための大規模公園の整備
? 国営公園(武蔵丘陵森林公園、飛鳥国営公園、淀川河川国営公園)の整備
 また、国営公園については、2箇所継続して行ってきたが、新たに淀川河川国営公園の整備に着手した。
 なお、都市公園のなかで、公害対策を主目的としたものに緩衝緑地がある。これは工場等により発生する有害ガス、騒音、振動等の公害から周辺の一般市街地の環境の悪化を防止することを目的とし、公害発生地域と一般市街地の間に広幅員のグリーン・ベルトを設けるものである。
 この事業は、公害防止事業団が都市計画事業の承認を受けて実施しているものであり、中央緑地(四日市市)、市原緑地(市原市)等の整備を完了した。
 47年度は国費8億円をもって多賀城緑地(多賀城市・七ヶ浜町)鹿島臨海中央緑地(神栖町・鹿島町)ほか6か所の整備の進捗を図った。


(2) 近郊緑地等
ア 首都圏近郊緑地
 首都圏においては、「首都圏整備法」により既成市街地の近郊で、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街地の整備と緑地の保全をあわせて図る地域として近郊整備地帯を指定しているが、この区域において良好な自然環境を有する緑地を保全し、適正な都市環境を確保するとともに、地域住民の健全な心身の保持増進と、公害および災害の防止に資するため、「首都圏近郊緑地保全法」に基づき、現在までに16カ所約12,600haを首都圏近郊緑地保全地域(第6-2-17表)として指定している。また、適地調査の結果に基づき、追加指定の作業をすすめている。
 なお、近郊緑地保全区域においては、建築物の新改築、木竹の伐採、土地の形質の変更等緑地の保全に影響を及ぼす行為について届出制とするほか、とくに保全を図るべき枢要な地区については都市計画の「近郊緑地特別保全地区」として決定することができることとなっており、すでに7地区約545ha(うち47年度175ha追加)を決定している。
 この地区については、一定の行為について許可制とするとともに、行為の規制により土地の利用に著しい支障をきたした場合に、土地の所有者の申し出により土地を買入れることになっており、46年までに約46haを買入れている。また47年度においては、国費56百万円を地方公共団体に補助して約2.5haの土地を買入れた。
イ 中部保全区域
 中部圏においては、「中部圏開発整備法」に基づいて、観光資源を保全し、もしくは開発し、緑地を保全し、または文化財を保存する必要がある区域を保全区域として指定することとなっており、48年3月現在、主に観光資源の保全開発に関連する18区域約124万haが指定されている。
 47年度においては、15区域について保全区域整備計画を作成し、内閣総理大臣の承認を受けた。
 また、47年度調査として、保全区域整備計画で設定された開発誘導地区の開発整備の方策に関する調査および中仙道の妻籠を対象に、文化財とその環境保全に関する基礎調査を、それぞれ実施した。
ウ 近畿保全区域
 近畿圏においては、「近畿圏整備法」に基づき文化財の保存、緑地の保全または観光資源の保全、開発を行なう区域として、昭和48年3月現在21区域約50万haの保全区域が指定されている。そのうち、市街化の特に著しい既成都市区域の近郊における保全区域内の樹林地(隣接一体の土地・池沼を含む)については、住民の健全な心身の保持、増進または公害、災害の防止を図るため、「近畿圏の保全区域の整備に関する法律」に基づき、近郊緑地保全区域として6区域約8万haが指定されている。この区域については近郊緑地の保全に影響を及ぼす一定の行為について届け出の義務が課せられている。特に重要な地区については都市計画の「近郊緑地特別保全地区」として決定することができることとなっており、既に5地区594haを決定している。この地区については一定の行為について許可制とするとともに、行為の規制により土地の利用に著しい支障をきたした場合に土地の所有者の申出により土地を買入れることになっており、昭和47年度までに、買入れた土地は約6.9haである。
 なお、昭和47年度末現在の保全区域および近郊緑地保全区域の指定状況は第6-2-18表のとおりである。
 保全区域については「近畿圏の保全区域の整備に関する法律」により府県が保全区域整備計画を作成し、区域内の整備の基本構想、土地の利用に関する事項、文化財の保存、緑地の保全または観光資源の保全、開発に関連して必要とされる施設の整備に関する事項についてその大綱を定め、区域の整備、保全を図ることとなっており、昭和46年度より作成に着手している。昭和47年度においては、越前海岸、京都、北摂連山、六甲、高野竜神の5区域について保全区域整備計画を作成し、内閣総理大臣の承認を受けた。残りの区域にかかる整備計画は目下作成中である。

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