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第2節 

5 都市等における自然環境の保全

(1) 風致地区
 都市の風致を維持するため、都市計画法に基づき風致地区が定められている。これは自然的要素に富んだ土地について良好な自然的景観と建築行為等との調和を図る制度であり、風致地区内における規制については、都道府県または指定都市の条例により定められており、建築物の建築、宅地の造成等を都道府県知事または指定都市の長の許可にかからしめるなど必要な規制を行ない、都市の風致の維持を図っている。なお昭和46年度末現在、風致地区は全国で646地区、約14万haが指定されており、昭和47年度においては、奈良市、大津市、佐世保市等において区域の拡張等を行なった。
(2) 古都における歴史風土の保存
 京都、奈良、鎌倉等の古都において歴史的意義を有する建築物、遺跡等が周囲の自然的環境と一体をなして古都における伝統と文化を具現しおよび形成している地域を保存するため、古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法に基づき、現在までに京都市等8市町村において約1万4,000ヘクタールの歴史的風土に保存区域を指定し、さらにこの区域のうち、特に必要な部分を構成している地域、約4,000ヘクタール(37地区)を都市計画の「歴史的風土特別保存地区」として指定している。歴史的風土特別保存地区においては、建築物その他の工作物の新築等歴史的風土の保存に影響を及ぼすおそれがある行為を、府県知事の許可にかからしめるとともに、土地の買上げを行ない、また、この地区以外の歴史的風土保存区域においても、それらの行為を府県知事に届け出るなど、必要な規制を行なっている。
 46年度までに買い上げを行なった土地の面積は、約49.0ヘクタールであり、47年度には富士箱根伊豆に国費約4億4,400万円を補助して16.1ヘクタールの土地を買入れた。
 なお、飛鳥地方については、昭和45年12月の「飛鳥地方における歴史的風土および文化財の保存等に関する方策について」の閣議決定に基づき国費約7億7,700万円(事業費約9億1,800万円)で環境の整備を行なっている(第6-2-19表)。


(3) 史跡、名勝、天然記念物の保護
ア 史跡等の保存整備
 貝づか、古墳、城跡等の遺跡でわが国にとって歴史上または学術上重要な歴史的記念物については、文部大臣はこれを史跡に指定することができることとなっており、48年3月31日現在912件が指定されている。指定された土地については、現状変更が制限され保護されることとなっている。また、史跡のうち、特に必要がある民有地については、これを買上げて保存するとともに、当該遺跡の性格・内容に応じた整備等の保護事業(補助事業)を行なっている。47年度は、史跡等の買上げとして、太宰府地区史跡(福岡県)、多賀城跡(宮城県)等86件、史跡の環境整備として、武蔵国分寺跡(東京都)等67件について補助を行なった。
 また、古墳等の遺跡が集中的に所在し、歴史的風土を形成している地域について、当該地域の環境整備、資料館の設置、民家の移築等を行ない、当該地域の文化財の一体的保存とその普及活用を図る「風土記の丘」の建設を促進しているが、47年度は、房総風土記の丘(千葉県)について補助を行ない、本年度までに8か所の整備を完了している。
 奈良盆地南部にある飛鳥・藤原地域は、わが国古代国家発祥の地であり、数多くの貴重な遺跡が所在している。このため、政府は、45年12月にこの地方の文化財等の保存等に関する閣議決定を行なった。文化庁では、史跡指定の促進、発掘調査の推進、史跡地の買上げおよび整備、資料館の設置等を行なっているが、47年3月に発見された高松塚古墳(明日香村)の極彩色の壁画については、この壁画および古墳の重要性にかんがみ、直ちに応急措置を実施するとともに、史跡に指定し、民有地部分の土地買上げを行ない、10月には総合学術調査を実施した。
 また、かつての奈良の都の宮城跡である平城宮跡については、現在約120haが特別史跡として指定されており、国費による民有地の買上げおよび整備を進めている。47年度は約3.5haの土地を買上げ、これまでに約78.5haの買上げを行なった。
イ 名勝、天然記念物の保護
 庭園、峡谷、山岳等の名勝地および動物、植物、地質鉱物等でわが国にとって観察上または学術上価値の高いものについては、文部大臣はこれを名勝または天然記念物に指定することができることとなっており、48年3月31日現在、名勝213件、天然記念物881件が指定されている。文化庁では、近年の開発の進展に伴い、天然記念物である動植物が減少しつつあることに対処するため、42年度から年次計画により、全国天然記念物緊急調査を実施し、この結果を植生図、主要動植物地図にまとめ、その保護の基礎資資とするとともに、天然記念物として保護されるべき動植物等の豊富な地域について特別調査を行なっている。47年度には北海道ほか9件の緊急調査、沖縄大東島の特別調査を行なった。
 また、絶滅の危機にある動物および衰退の著しい天然記念物の指定地域については、これを回復するための保護増殖事業として給餌、人工増殖、湿原回復等を行なっており、47年度は18件について補助を行なった。

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