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第1節 

2 環境サイクル

 汚染物質による健康影響の形態としては、大気汚染の影響によるぜんそくのように、汚染物質が直接に人体に影響を与える場合もあるが、環境サイクルを考える場合、生物による汚染の増幅機構が問題となる。
 これについては、水俣病が一つの例としてあげられている。工場の廃液からは現在の分析技術では水銀が検出されていない状態であっても、ゼロでない限り排水中の水銀は海へ入っていき、海底に蓄積する。そして、まず海底に生息する苔、藻の類、あるいはプランクトン等がこの水銀を取り込み、次いでこれらを食物とする魚介類に水銀が一緒に取り込まれるのであろう。このような循環を重ねることにより、ある種の増幅作用が起こり、最終的には人間がこの魚介類を大量に長期間摂食することにより、水俣病が発生したものと推定される。こうした形を食物連鎖による汚染の増幅機構と称しているが、PCB等難分解蓄積性の物質は、それが極めて微量であっても環境への流出を厳しく規制するとともに、このような生態学的視点に立った環境汚染の監視が必要である。

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