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第1節 

2 騒音の現況

 騒音の発生源は多種多様であるが、苦情件数で見る限りにおいては、工場騒音が最も多くなっており、次いで建設騒音、深夜騒音となっている(第4-1-1表)。
 また交通輸送機関の発展に伴い、地域によっては、新幹線等の鉄道騒音、航空機騒音が問題化している。
 一方、地域ごとに環境騒音の状況をみると、道路とくに幹線道路に面する地域においては、レベルが高く、また準工業地域、工業地域においても、自動車騒音による影響が大きいことが注目される(第4-1-1図第4-1-2図)。
(1) 工場騒音
 工場騒音の騒音源としては工場機械音が大部分で、とくに24時間操業をする業種については夜間の騒音が苦情の対象となっている。
 工場騒音が公害をもたらす原因としては機械等の発生音量が大きいことのほか、整備不良の機械の使用、建物構造の不備などがあげられるが、住居と工場の混在している現今の土地利用状況にも原因がある。
 とくに一般に住居地域にある工場は、比較的小規模なものが多く、狭い敷地で操業している等のため、問題を発生させやすい。
 また東京都における工場騒音調査によると、業種別には鉄工業が最も高い騒音を発生しており、次いで化学工業、木材・木製品の順となっている(第4-1-3図)。
 建設騒音としては、建設工事に使用する機械類から発生するエンジン音、機械類と工事用材料との摩擦、衝撃音および施工中の各種打撃、破壊音、掘削音等があるが、一般に音量が大きい。
 建設騒音の苦情発生状況を横浜市の調査結果についてみると、ジーゼルハンマー、ト・ロップハンマー等を使用する基礎工事およびブルドーザー、ショベル等を使用する土工事による問題が最も大きくほぼ半数をしめており、コンクリート工事、解体工事による問題も比較的多い。
 また建設工事は、商業地域、住居地域等住居の比較的密集した地域で行なわれることが多いことも苦情の多い原因となっている。(第4-1-4図)


(3) 航空機騒音
 最近における航空輸送の発展は、まことにめざましいものがあり、旅客輸送量については、過去10年間に年率平均30%程度の伸びを示している。
 航空輸送需要の増加は、航空機の便数の増加をもたらすとともに航空機の大型化、ジェット化を促してきた。
 しかし、このようなジェット機を中心とする航空輸送の増加は、一方において空港周辺の住民の日常生活に対し航空機騒音による障害を惹起するにいたっている。
 とくに障害の大きい大阪国際空港および東京国際空港周辺についてはそれぞれ住民から国を相手として航空機騒音に係る訴訟が起されていたが、東京国際空港に係る訴訟は各種の対策が講じられたことによって48年1月に取り下げられた。
 大阪国際空港については訴訟のほか、48年1月には伊丹市の2千名余の住民から、公害紛争処理法に基づき、公害等調整委員会に航空機騒音による公害の紛争処理の調停申請が出された。
 なお、航空機騒音の障害の軽減に資するため、1969年にはICAOにおいて、新機種の場合は騒音レベルが一定基準以下のものでなければ就航できないという騒音基準適合証明制度が提唱され、わが国もこの制度を採用することとし、国内法化のための航空法の一部改正法案が第71回国会へ提出されている(第4-1-5図)。


(4) 新幹線騒音
 新幹線は、開通以来、年々利用客が大幅に増加し、東海道・山陽の各都市群を結ぶ高速交通機関として重要な位置を占めており、さらに東北・上越新幹線も昭和46年に着工されている。
 しかし、列車の高速運行に伴い発生する騒音は、そのレベルが高く、開通当初より沿線各地で苦情が発生している(第4-1-2表第4-1-6図)。
 また、最近では、新線建設に対しても、新幹線騒音は良好な生活環境を破壊し地域住民の福祉向上に反するものであるとして建設反対の声がもち上っている。

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