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第3節 

2 規制措置の強化

(1) 上のせ排水基準の設定
 公共用水域の水質の保全のために、水質汚濁防止法は公共用水域に排出される排出水について全国一律の水質基準(排水基準という)を定め、特定の施設を有する工場または事業場から公共用水域に排出しようとする排出水のうち当該排水基準に適合しないものの排出を禁止している。更に、水質汚濁問題が主として地域的な問題であることにかんがみ、それらの水域の水質環境基準を維持し、達成するために、全国一律の排水基準より厳しい上のせ排水基準の設定等の排水規制を都道府県に行なわせることとし、よりきめの細かい水質保全行政が行なわれることを期待している。参考資料9に示すとおり47年度末において39都道府県において、大都市内河川、工業地帯地先海域を中心に、都道府県の一部又は全部の水域について、上乗せ排水基準が設定され、水質規制は一段と強化されることとなった。
 さらに、地域開発等により今後水質汚濁の進行するおそれのある水域については、水質汚濁の未然防止に万全を期するため、上乗せ排水基準の設定を促進することとし、これに必要な水域の水質調査費および調査済みの94水域に対する上乗せ排水基準の設定費の補助を行なった。
(2) 規制対象の拡大
 水質汚濁防止法は、工場排水規制法当時の約130業種の約4倍に相当する約520業種を規制対象としている。47年10月1日から、かねてから、水質保全上の大きな問題の一つとされていた畜舎排水についても、規制対象とすることとした。すなわち豚房、牛房および馬房の合計面積がそれぞれ50m
2
、200m
2
および500m
2
以上の畜房を有する畜産関連事業場をすべて規制対象とし、1日の排水量が50m
3
以上の事業場について、一般基準を適用し、畜舎排水による水質汚濁の未然防止に万全を期することとした。
 また、現在規制対象とされていない事業場についても、水質保全を図るうえで必要があれば規制対象とすることとし、病院、旅館および自然科学系の試験研究所について、排水の実態把握のための調査を実施した。
(3) 規制項目の追加
 最近問題となっているPCBなど、自然界における分解浄化が期待されず、従って自然界に排出されると汚染を不可逆的に進行させる汚染因子が増加する傾向がうかがえる。
 このような水質汚濁要因の多様化に対処し、47年7月17日PCBの環境への排出を極力抑制しPCBによる環境汚染の防止に資するため、PCBの取扱い工場、PCBを排出するおそれのある工場等における排水管理上の暫定的指導指針を設定した。
 この暫定的指導指針は、工場・事業場においてPCBの排出量を増加させないことを原則とし、用水または処理原水中のPCBの濃度を定量検出限界(0.01ppm)を超えて変動させてはならないこととし、PCBを含む原料の使用を極力停止するような措置を定めたものであり、統一的な分析方法の開発、PCBによる慢性毒性に関する研究等の進展をまって可及的速やかに水質汚濁防止法に基づく排水規制の対象としてPCBを追加することとしている。
 また、環境に対する影響については必ずしも明らかにされていないが、環境汚染のおそれのある物質または項目として、PCBのほか温度、色、窒素、燐、ABSおよびアンチモン等が問題とされているが、温排水、有色排水について46年度に引続き、環境に及ぼす影響に関する調査研究を実施し、また、窒素、燐についても、海域の赤潮および湖沼の富栄養化の進行に関連し、発生源の実態は握につとめているところである。
 さらに、合成洗剤の主要成分であるABSについては、水道水源の汚染や河川の発泡現象の要因物質として指摘されているが、最近における生態学的な研究の進展に伴い、その生態系に及ぼす影響についての関心が高まっており、ABSの環境に及ぼす調査研究に着手した。

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