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第1節 

3 最近における水質汚濁の要因

 水質汚濁の要因の第1は、近年の急速な経済成長に伴う水消費量、排水量の増大と汚濁因子の増加である。これらについて考察すると、わが国の経済は30年以降は平均10%を上まわる経済成長を続け、その工業出荷額は40年の約29兆円から、45年には約69兆円へと2倍以上になった。また、地域別には第3-1-2表のようにいぜんとして関東臨海、東海、近畿臨海の3地域で全工業出荷額の3分の2を占めている。
 また、工業用水(淡水)の1日当たり使用量は40年の4,916万トンから、45年には、8,504万トンへと73%の増加を示しており、これを地域別にみると、三大都市圏(京浜・阪神・中京)の伸びが比較的低いのに対し、三大都市圏の隣接地域、外周地域、新産業都市建設地域および工業整備特別地域等の新興地域の伸びが著しい(第3-1-3表)。これらの新興地域における工業の伸びは都市部から外周へと汚濁の全国的な広がりをもたらす結果となっている。
 また、わが国の産業のなかで、汚濁負荷量の大きい食品、紙・パルプおよび化学工業における工業用水(淡水)の使用量の全体に占める割合は、45年には56%であり、なお依然として高い割合を占めている。とくに、紙・パルプおよび一部の食料品製造業については、特定の地域への集中がみられ、ヘドロ公害などを誘発して、地域の深刻な社会問題にまで発展している。
 一方、消費構造の高度化や技術革新に伴う製品の多様化により製造工程等で各種の物質を使用する結果、新たな汚濁物質の出現をもたらし、これが環境を汚染している。PCBなどはその代表例といえるが、かつて37年にはじめて排水規制が行なわれた江戸川の排水基準は、pH、COD、SSの3項目であったものが、約10年後の46年に施行された水質汚濁防止法に基づく排水規制についてみると、銅、亜鉛、カドミウム、アルキル水銀など20項目に増加している事実は、その傾向を物語っているといえる。
 水質汚濁の要因の第2は、人口の著しい都市集中ならびに生活の近代化に伴う一般家庭の生活排水の急増である。
 最近10カ年の人口と排水量の動向を地域別にみると関東、東海、近畿の三大都市圏における伸びが著しく、しかも、これらの地域のなかにあっては、その周辺県の新興住宅地における伸びがより著しいことが特徴的であり、最近5カ年は、第3-1-4表のように人口増加率で10〜30%、排水量増加率で30〜90%となっている。
 水質汚濁の要因の第3は、公共下水道の生活環境の保全に関連した社会資本の整備の立ち遅れである。し尿を含む一般家庭の生活排水や零細企業の排水については、工場・事業場の排水基準と同水準の処理能力をもつ排水処理施設を設置することは困難であり、かつ効果的でもないので、その対策としての下水道整備は水質保全上重要である。わが国の下水道普及率(下水道整備面積/市街地面積)は、47年度末で25.0%にすぎず、また50年度末を目標とする第3次下水道整備5箇年計画が完了した時点の見込みでも約38%である。これは欧米諸国の60〜90%と比較しても、著しく立ち遅れているということができる。

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