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第3節 

4 大気汚染監視測定体制および予報体制の整備

 わが国の大気汚染問題は、急激なエネルギー使用量の増大、あるいはモーターリゼーションの進行等に伴い、顕在化し、年々拡大してきているが、さらにここ数年来光化学反応によって生ずるオキシダント等の二次汚染物質による大気汚染問題も発生し、質的にも複雑化の兆を呈している。
 この大気汚染問題に対処するには、環境基準の設定、ばい煙の排出規制等の基本的な施策の推進とあわせて、大気汚染の状況を常時的確に把握し、高濃度汚染等の事例が発生した場合すみやかに適切な措置を講じ得る体制の整備を図ることが必要である。このため国および地方公共団体においては監視測定体制および予報体制の整備を積極的に進めている。
(1) 国設大気汚染測定網
 大気汚染物質のうち現に規制の対象となっている物質のみならず、他の物質を含めて大気汚染の態様を全国的な視野で把握するとともに、環境基準の設定、公害防止計画の策定等に必要な基礎資料を得る目的をもって、全国の主要地域15ヶ所に国設大気測定局が設置されており、その設置場所は、札幌、仙台、鹿島、市原、東京、川崎、新潟、名古屋、大阪、尼崎、松江、倉敷、宇部、北九州および大牟田の各都市である。
 この測定局には、いおう酸化物、浮遊ふんじん、窒素酸化物、オキシダント、一酸化炭素、炭化水素、気象(風向風速温度湿度)等の各種自動計測機、粉じん採集器(ハイボリウムエアサンプラー)および測定データを自動的に集計記録するためのデータ処理装置が設置されており、このデータをもとに大気汚染要因の解析、究明が行なわれている。
 また自動車排出ガスについても国設自動車排出ガス測定局が東京都内の3カ所に設置されており、一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素、浮遊ふんじん等の自動計測機により自動車排出ガスによる大気汚染の実態解明に必要なデータの収集が行なわれている。
 これら国において設置している測定局は主目的のデータの収集のみならず、各種計測機の改良開発、あるいは地方公共団体において整備される大気汚染測定網における測定方法の標準化等を図るために必要な資料を提供しており、大気汚染の防止策を確立するため多くの役割を有している。
(2) 地方大気汚染監視測定体制
 地方における大気汚染にかかる監視測定は、大気汚染防止法第22条の規定に基づき大気汚染の常時監視義務を有する都道府県および同法施行令第13条の規定に基づき当該事務の委任を受けた市において行なわれている。
 これら地方公共団体の大気汚染監視網は標準的なテレメーターシステムを導入して整備されており、測定データの収集等は遠隔操作によりすべて自動化されている。
 すなわち各測定局(モニタリングステーション)に設置されている各種の自動計測機は1時間を単位とする周期で計測が行なわれ、この1時間毎の測定データは毎時監視センターからの呼出信号により自動的に伝送される。センターにおいては各種の伝送データをデータ処理装置(コンピューター)によって集計、記録し、同時に汚染状況表示盤にその時点の管内全域にわたる汚染状況が造形的に表示され大気汚染の集中的な常時監視が可能となっている。
 また高濃度汚染が発生した場合における緊急時の措置を的確に講ずるため同時通報装置を併設し、関係企業に対する緊急時の際の協力要請伝達等の各種業務が迅速化され、大気汚染の防止に効果を挙げている。
 また、この大気汚染監視網は日々のデータの集積によって現に設定されている環境基準に対する地域の適合状況の比較検討、あるいは、各地域ごとに定められているいおう酸化物の排出基準の設定、都道府県が行なう排出基準の設定等に必要なデータを提供するもので、大気汚染防止の実効を期するために多くの役割を有している。
(3) 大気汚染広域監視測定体制
 首都圏地域、阪神地域等の地域においては、当該地域全域に影響する高濃度汚染が発生する事例が多く、当該地域内の各自治体が個々の判断により管内行政区域内のみで行なう規制措置を講じても、広域的な防止効果は期待し難い状況にある。このような広域的な汚染を防止するには、関係自治体相互が大気汚染にかかる情報を常時交換し、広域圏全域にわたる汚染状況を相互に把握し、高度濃汚染が発生した場合における緊急時の措置を関係都道府県が同時に講ずることが必要である。このための首都圏地域(東京、埼玉、千葉、神奈川)、阪神地域(大阪、兵庫)においてテレメーターシステムによる情報交換システムが整備されており広域的な大気汚染の防止に効果をあげている。
(4) 予報体制
 大気汚染の緊急の措置に資するためすでに設置されている東京、大阪に加えて新たに名古屋地方気象台に大気汚染気象センターを設置するとともに、各県予報部担当官署である地方気象台は、大気汚染防止法に定められた緊急時の措置に関して都道府県知事から気象情報の提供について要請があつた際には、これに協力する体制を整備した。

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