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第3節 

3 OECD(経済協力開発機構)等における活動

 OECDにおいては、第1部に述べたように1970年環境委員会を設置し、1971年度から本格的な活動を開始した。これまでに環境委員会の下には大気管理、水管理、化学品および都市環境に関する4つのセクター・グループと、固定施設における燃料燃焼による大気汚染、自動車の環境へのインパクト、および紙パルプ産業による汚染に関する3つのアド・ホック・グループが設けられたほか、ビューロー・ミーティングおよび経済専門家小委員会が活動している。
 環境委員会の活動による1971年度の具体的な成果として特筆されることは、「人または環境に悪影響を及ぼす物質を規制するための措置に関する通報協議制度」および「環境の国際面に関するガイディング・プリンシプル」があげられる。通報協議制度の目的は、?人または環境に悪影響を及ぼす物質に対する防御措置を、事前または事後(その措置をとった後、できるだけ早く)に加盟国に知らしめる。?相互理解増進のため、その規制措置の技術的正当性について協議を行なうことによって、各国の規制措置が他の国の貿易および経済に及ぼす悪影響の軽減を図ることである。すでに通報例はいくつかあるが、わが国からは「殺虫剤BHCの農林業への全面禁止」を昨年12月事前通報した。また、「ガイディング・プリンシプル」においては、とくに汚染原因者が公害防止費用を負担することを強調した「染汚原因者負担の原則」(PPP-PolluterPays Principle)が本年2月行なわれた第4回環境委員会において合意され、理事会に報告されることとなった。
 つぎに、各グループ等の1971年度中の活動状況を概説すると次のとおりである。
 経済専門小委員会は、PPPの原則についての専門家による検討を行ない、ガイディング・プリンシプル作成に当たっての基礎的な貢献を行なった。
 大気管理セクター・グループにおいては、アルミ精練業から発生する弗化物による大気汚染に関する報告書がまとめられた。このほか、大気汚染物質の長距離移動、大気汚染物質の測定方法の国際比較、大気汚染物質の影響等について検討した。今後の作業としては、これらの進展と、光化学スモッグの検討が主に予定されている。
 水管理セクター・グループでは、富栄養化防止、綜合的水資源管理、中性洗剤の生物による分解性の調査等を中心に作業が進められ、このうち中性洗剤の調査については、標準調査方法を開発し、この方法を採用すべしとの勧告を採択している。また、綜合的水資源管理の一環として行なわれるコンサルタントの各国訪問による資料収集、意見交換の結果がまとまれば、各国の水資源管理の制度、内容の国際比較が可能となり、その成果が期待されている。
 化学品セクター・グループでは、水銀を中心に作業が進められ、ノブ氏がまとめたレポートが報告された。更に、水銀規制の方法、他の物質による代替状況、今後の規制のあり方等を研究するために設けられた4ヵ国からなるワーキング・パーティーでは、わが国も構成国となり、その中心的役割を果たしており、研究の成果が期待されている。
 都市環境セクター・グループでは、ノーカーゾーンの設置、新規および大規模再開発を伴う地域計画、政策および手段の効果の解析を主要作業として進めている。
 燃料燃焼アドホック・グループは、硫黄酸化物について、1980年に予想される汚染の状況、防止技術、防止対策、その費用等について各国からナショナル・レポートを提出させた。わが国も、「日本における固定施設での燃料燃焼による大気汚染」と題するレポートを提出した。
 紙パルプ産業アドホック・グループでは、紙パルプ産業による汚染の現状、汚染除去のための技術およびその費用、各国の紙パルプ産業における汚染制御政策等に関するとりまとめが行なわれた。
 自動車アドホック・グループでは、自動車による大気汚染および騒音を軽減するための種々の方策についての確認評価、排出規制技術とその費用についての検討、および現在の自動車排出規制が政府、経済、利用者に及ぼす影響等についての報告がとりまとめられた。
 セクター・グループの活動は、原則としてOECD本部のあるパリで行なわれることとなっているが、大気管理セクター・グループはわが国における総合的大気汚染防止システムを研究することが加盟国にとって極めて有益であるとの結論に基づき、本年秋、東京においてその会合を開催する予定である。
 つぎにGATT(関税及び貿易に関する一般協定)においても「環境問題と貿易グループ」が昨年11月の理事会において設置され、主として政府の環境保全措置が国際貿易に及ぼす影響について検討することになっている。

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