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第1節 

3 騒音防止対策

(1)騒音に係る環境基準の設定
 騒音に係る環境基準(以下「環境基準」という。)は、厚生大臣の諮問機関である生活環境審議会の答申を基に昭和46年5月25日に閣議決定された。
 その概要は次のとおりである。
? 基準値
 一般地域
 道路に面する地域


? 測定方法
 JISZ8731により、原則として中央値をとる。
? 測定場所
 代表的な地点または問題を生じやすい地点、道路に面する地域については原則として道路に面している建物から道路側1メートルの地点。
? 測定時刻
 代表的な時刻または問題を生じやすい時刻、道路に面する地域については、朝・夕各々1回以上、昼間・夜間各々2回以上、とくに覚醒、就眠の時刻に注目して測定する。
? 達成期間
 一般地域については直ちに達成するものとする。道路に面する地域について5年以内に達成するものとする。ただし幹線道路に面する地域については5年をこえる期間で可及的速やかに達成するものとする。幹線道路とは道路法第3条に定める高速自動車国道、一般国道および都道府県道(2車線以上のものに限る。)ならびに都市計画法施行規則第7条第1項第1号に定める自動車専用道路および幹線街路をいう。
? 適用除外
 本環境基準は、航空機騒音、鉄道騒音および建設作業騒音には適用しない。
(2) 規制措置の強化
 昭和45年12月のいわゆる公害国会において、騒音規制法の一部改正が行なわれ、規制措置が強化されたが、これに伴い、昭和46年6月、同法および道路運送車両法の関係政省令を制定した。なお昭和46年7月の環境庁発足に伴い騒音規制法の主務大臣は環境庁長官に一元化された。
ア 自動車騒音の規制
 従来、騒音規制法は、工場騒音および建設作業騒音のみを規制対象としていたが、近年の自動車騒音に関する被害の増大に対処するため、自動車騒音を規制対象に加えるとともに、その騒音の大きさの許容限度の設定等自動車騒音対策の抜本的強化が図られた。
 これらの強化措置を実施するため、まず騒音規制法の規制対象となる自動車を特殊自動車を除くすべての自動車および原動機付自転車と定め、これらの自動車について第5-1-6表のとおり車種および自動車の大きさ別に定常走行騒音および排気騒音と加速走行騒音に区分して許容限度を定めている。
 これをうけて、運輸大臣は自動車の運行に伴う騒音の具体的規制措置として、道路運送車両法に基づく規制を行なうとともに、すべての自動車使用者に対し、定期点検整備を義務付けている。
 また、騒音規制法の規定による交通規制の要請基準については第5-1-7表のとおり地域を第1種区域から第4種区域までに区分し、これらの区域について道路の車線の数および時間帯別に自動車騒音の大きさの限度を定めた。なお、この区域区分については都道府県知事の定めることとした。
 また、騒音規制法の規定に基づき都道府県知事が都道府県公安委員会に対し交通規制を要請することができることとなったことに伴い、道路交通法の規定により都道府県公安委員会は、自動車排出ガスによる大気汚染の場合と同様の措置を講ずることができることとなっている。なお、整備不良車についても自動車排出ガスの場合と同様の規制が強化された。
イ 指定地域の拡大
 騒音規制法に基づき、工場騒音に対する規制が行なわれる指定地域については、従来、市の市街地および隣接町村に限定されていたが、新たに住居が集合している地域にまで拡大し騒音規制の必要な地域を、ほとんどカバーすることとした。なお、これに伴う都道府県における地域指定の手続は、昭和46年度中にほとんど終了した。
 さらに、従来、建設騒音の規制地域は、指定地域のうちの住居地域を主とする地域に限られていたが、新たに指定地域全体に拡大し、工場騒音と建設騒音の規制地域を同一地域とすることに改めた。なお、住居地域と工業地域を主とする地域については夜間の作業禁止等の時間規制の程度に差を設けた。


(3) 航空機騒音対策
 航空機騒音については、これまで「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」および「防衛施設周辺の整備等などに関する法律」に基づき、学校、病院等の防音工事に対する補助、移転補償を行なうほか、テレビ受信料の補助、航空機の航行に関する規制等などの措置を講じてきた。また、防衛施設周辺では騒音用電話機設置事業に対する補助が行なわれている。しかし、東京および大阪両国際空港周辺地域においては、なお騒音問題がきわめて深刻化し看過しがたい状況であることにかんがみ、昭和46年9月、環境庁は中央公害対策審議会に対し、「環境保全上緊急を要する航空機騒音対策について当面の措置を講ずる場合における指針」について諮問し、同審議会の答申に基づき、昭和46年12月28日、次のとおり指針を設定した。
? 航空機騒音による空港周辺地域の住民の生活環境上の被害をできるだけ軽減するようにすることとし、とくに夜間、深夜においては睡眠等が妨げられることのないよう、静穏の保持を図ること。
? 航空機騒音がWECPNL85以上に相当する地域については、これにより住居内における日常生活が著しくそこなわれることのないようにすること。
 この指針を達成するため、同日付けで環境庁は、運輸省に対し勧告を行ない、運輸省はこれを受けて次のような緊急対策を定め、早急に実施することになった。
ア 運航ダイヤ及び航行の方法に対する措置
(ア) 大阪国際空港
 航空機の発着は、午後10時より翌日午前7時までの間、緊急その他やむを得ない場合を除き行なわないものとする。この場合、郵便輸送機にあっては、輸送の代替手段を考慮し、段階的に実施するものとする。
(イ) 東京国際空港
a ジェット機の発着は、午後11時から翌日午前7時までの間、緊急その他やむを得ない場合を除き行なわないものとする。
b ジェット機による午後10時から同11時までの間及び午前6時から同7時までの間の発着並びにプロペラ機による午後10時から翌日午前7時までの間の発着については、原則として04及び15離陸並びに22及び33着陸により行なうものとする。
c aにかかわらず、当分の間国際線のやむを得ない遅延による到着便は認めるものとし、この場合、原則として22及び33着陸により行なうものとする。
 なお、上記措置の実効が図られるよう、運行ダイヤの認可及び航行の方法の指定にあたり厳密且つ適確な指導方針によることとする。
イ 大阪国際空港における滑走路32側(豊南小学校騒音測定塔)における騒音の測定値に基づき可及的速やかにその限度を設定することとする。
ウ エンジンテストの時間及び場所は原則として次のとおり指定すること。
(ア) 大阪国際空港
a 午前6時30分から午後10時までの間
b 遮音施設内とする。
(イ) 東京国際空港
a ジェット機……U地区試運転エリヤに限る。
b プロペラ機……T-303格納庫前面地域及びU地区試運転エリヤを除き午後10時から翌日午前6時30分まで禁止する。

エ 騒音障害防止措置は次のとおりとすること。
(ア) 昭和47年度予算1,600万円をもって民家の防音工事の実験調査を行ない、可及的速やかに法改正を行なうに必要な準備を進める。
(イ) 移転補償を促進するため、国と空港周辺地方公共団体との協力体制の確立を図る。この場合、地方公共団体は、空港周辺の土地利用計画の推進及び移転補償を受ける者のための代替地の買入れ、造成、あっせん等を行ないうるよう検討を進めるとともに、国は、これらに必要な財源措置の一環として航空機燃料譲与税を譲与することとする。

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