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第1節 

2 騒音の現況

 騒音の発生源は多種多様であるが、千葉県の例にみられるとおり鉄鋼金属製品の製造業関係を主とする工場騒音が最も多く、次いで建設業関係、都市生活関係のものとなっている。(第5-1-1図)。また、交通輸送手段の進展に伴い、地域によっては、新たに鉄道騒音、航空機騒音が問題化してきている。
 一方、用途地域別に騒音の状況をみると、経年的には大きな変化がみられないが、住居と工場が混在している準工業地域において問題が多く、また、住居地域においても高い騒音のみられるところが少なくない。(第5-1-1表)。
(1) 工場騒音
 騒音源としては工場機械音が大部分で、とくに24時間操業をする業種については夜間の騒音が苦情の対象となっている。工場騒音が公害をもたらす原因としては機械等の発生音量が大きいことのほか、整備不良の機械の使用、建物構造の不備などもあげられるが、住居と工場の混在している現今の土地利用状況に根本原因がある。たとえば、東京都大田区における工場の立地状況を用途地域の区分にしたがってみれば、住居地域に立地する工場が一番多く、ついで準工業地域、工業地域の順となっている(第5-1-2図)。一般に住居地域にある工場は、比較的小規模なものが多く、狭い敷地で操業している等のため、とくに問題を発生させやすい。


(2) 建設騒音
 建設騒音としては、建設工事に使用する機械類から発生するエンジン音、機械類と工事用材料との摩擦、衝撃音および施工中の各種打撃、破壊音、掘削音等があるが、一般に音量が大きい。なかでもディーゼルハンマーでは10m地点で112〜93dB(A)、30m地点で103〜84dB(A)、ドロップハンマーでは10m地点で108〜91dB(A)、30m地点で98〜81dB(A)となっている。さらに、その周波数成分も不快感を与える程度の強い500〜4,000へルツ(Hz)に主成分があり、苦情の多い原因となっている(第5-1-3図)。
 昭和46年における騒音関係の苦情陳情17905件のうち、建設作業に係るものは1892件であり、内容をみると、くい打作業に対するものが最も多く、次いで、さく岩機を使用する作業、空気圧縮機を使用する作業が多い。
 これらの建設作業騒音に対し、騒音規制法は著しい騒音を発生する作業を特定建設作業として指定し規制しているが、46年において同法の施行状況を調査した結果では、特定建設作業の届出件数は13392件であり、改善勧告または改善命令を行なったものは40件に及んでいる。
 このような建設工事に伴う騒音公害の防止の見地から、近年、都市における大規模な建設工事においては、たとえば、くい基礎工事においては従来の既成ぐいの打撃工法に代って場所打ちくい工法、または低騒音くい打ち工法の採用、リベット打ち作業についてはハイテンションボルト締め工法の採用、あるいは工場でのリベット打ち作業をできるだけふやし、現場でのリベット打ち作業を少なくするなど低騒音、低振動工法の採用も進んでいる。


(3) 自動車騒音
 自動車による騒音は、エンジン、吸排気管、ファンおよびラジエータ、トランスミッション、タイヤなどから発生する音により形成されており、これらが自動車の種類、走行条件および路面の状態等の各種変動要素と複雑にからみあって騒音となっている。
 自動車騒音の大きさは、もとより交通量によって異なるが、全国主要道路の騒音の状況をみると、第5-1-2表のとおりであり、交通量の多い幹線道路周辺地域の騒音問題は、とくに深刻になっている。


(4) 航空機騒音
 最近における航空輸送の発展は、まことにめざましいものがあり、旅客輸送量については、過去10年間に年率平均30%程度の伸びを示している(第5-1-3表)。
 航空需要の増加は、航空機の大型化、高速化を促すとともに、運航回数を著しく増加させることとなった。
 ジェット機は、このような航空需要に応ずべく、34年12月初めてわが国に登場したが、以来その高速性、安全性、大量輸送性、経済性等の利点から、国際線および国内線はともに急速にジェット化が進められてきた。
 しかし、このようなジェット機を中心とする航空輸送の増加は、一方において空港周辺住民の日常生活に対し航空機騒音による障害を惹起するにいたっている。
 航空機騒音は、機種、飛行高度、飛行方向、離着陸別その他天候などによってその大きさは異なるが、空港周辺では相当の範囲にわたり影響を及ぼしており(第5-1-4図)、また、一般騒音と違って間欠的ではあるが、衝撃性が強い点に問題がある(第5-1-4表)。
 とくに使用頻度の高い東京および大阪両国際空港の周辺地域においては、騒音問題が深刻化しており、会話妨害、テレビ・ラジオの受信障害等を招いている。このため大阪国際空港周辺の住民から3件、東京国際空港においては江戸川区と住民から1件、航空機騒音に係る訴訟が提起されている。


(5) 新幹線騒音
 新幹線は、開通以来、年々利用客が大幅に増加し、東海道の各都市群を結ぶ高速交通機関として重要な位置を占め、昭和45年度までの輸送人員は3.6億人に達しており、また47年3月には岡山まで延長された。一方、高速運行による列車騒音は、開通当初より問題となっており、さらに東北新幹線、成田新幹線の建設についても反対がかなり出ている。
 現在までの東海道新幹線の実態調査によると、騒音の大きさは場所により異なるが、線路の中心から25m離れた屋内で60〜70ホン程度、屋外では80〜90ホン程度である(第5-1-5表)。

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