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第2節 

3 休養施設の整備等

(1) 休養施設の整備
ア 国民宿舎
 国民宿舎は、自然公園等のすぐれた自然環境の中で、だれもが気軽に、しかも快適に利用できるように設置された健全な宿泊休養施設であり、昭和31年度から地方公共団体が厚生年金保険積立金還元融資ならびに国民年金特別融資を受けて設置し、運営しているものである。
 昭和46年度までに設置された宿舎数ならびに建設に要した融資額は第4-2-14表のとおりである。国民宿舎の利用者は、近年、急速に増加し、第4-2-15表のとおり昭和45年度においては、宿泊、休憩を合わせて676万人に達している。
イ 国民休暇村
 国民休暇村は、国立公園および国定公園の自然環境のすぐれた休養適地に、自然との調和を図りながら、低廉でしかも清潔な宿泊施設をはじめ各種の野外レクリエーション施設を総合的に整備した保健休養施設で、昭和36年度から建設が進められ、昭和46年度までに第4-2-16表のとおり20地区が一般の利用に供されている。国民休暇村の施設のうち、遊歩道、園地、キャンプ場等の公共施設については国または地方公共団体が整備し、宿舎、ロッジ、スキーリフト等の有料施設については、財団法人国民休暇村協会が整備、運営にあたっている。昭和46年度までに設置された国民休暇村の地区数ならびに建設に要した投資額は第4-2-17表のとおりである。
 国民休暇村の利用者は、最近における都市の過密化、生活環境の悪化等を背景として、第4-2-18表のとおり、毎年、著しい増加がみられ、昭和45年度においては宿泊、休憩およびその他の野外レクリエーション施設の利用者を会せると約530万人にのぼっている。
ウ 国民保養センター
 国民保養センターは自然公園、国民保養温泉地等の休養適地において、主として地域住民が気軽に利用ができるように設置された低廉で健全な日帰り休養施設で、昭和42年度から地方公共団体が厚生年金保険積立金還元融資ならびに国民年金特別融資を受けて設置し、運営しているものである。
 昭和46年度までに設置された施設数およびこれに要した融資額ならびに利用状況は第4-2-19表のとおりで、昭和45年度における利用者数は約135万人に達している。
エ 国民休養地
 野外レクリエーションの需要は、都市における生活環境の悪化および余暇時間の増大等を背景として近年著しく増加しているが、これに対応する健全な保健休養施設は、特に都市周辺において質量ともに不十分な状態にある。
 そのため、都道府県立自然公園その他自然環境が良好に保持され、かつ、都市より比較的交通の便利な休養適地を国民休養地として確保し、自然保護との調和を図りながら、宿泊施設をはじめ、遊歩道、園地、キャンプ場等の各種の野外レクリエーション施設を計画的に整備する必要があるので第4-2-20表のとおり昭和45年度には15地区を、昭和46年度には6地区をそれぞれ国民休養地として承認し現在整備中である。
 国民休養地の整備および管理の主体は、都道府県および市町村であり、その整備を行なおうとする都道府県または市町村は、国民休養計画を策定し、環境庁長官の承認を受けることとなっている。


(2) 国民公園および墓苑
 旧皇室苑地であった皇居外苑、新宿御苑および京都御苑は国民公園として昭和24年以来厚生省が、昭和46年7月以来環境庁が管理し広く一般に利用され親しまれている。
 皇居外苑は、昭和44年4月から建設省により森林公園として整備された旧江戸城北の丸地区を加えて一般の利用に供されている。皇居前広場はクロマツと芝生を中心に整備されており、利用者は年間約800万人に及んでいる。近年、交通量の増大による排気ガス等によってクロマツ等の樹木が衰弱してきたので、昭和40年度から3年計画で補植等を行なったが、昭和43年度以降もひきつづき、老木等の補修を行なっている。このほか、公衆便所の改築、堀のしゅんせつ、芝の張替え等の整備を行なった。また、北の丸地区は、森林公園にふさわしく18.9ヘクタールの園内にはかん木を含めて百数十種、10万本をこえる樹木が植えられ、年間利用者は350万人に達している。
 新宿御苑は、明治時代における和洋折衷の代表的庭園で年間利用者は約180万人に及んでいる。面積58.3ヘクタールの苑内には、約1,400本の桜樹があるが、四季にわたり花を観賞できるよう昭和45年度から5カ年計画を持って全苑にわたり花木の整備を進めたほか、芝生の張替え、温室放熱器の改修等を行なった。
 京都御苑は、京都御所を囲む面積65.3ヘクタールの苑地で、御所の環境を守るとともに京都市の中央公園的役割を果たしており、年間利用者は約600万人に及んでおり、その利用の適正等を図るため芝生の張替え、野外灯の増設等を行なった。
 千鳥ヶ渕戦没者墓苑は、千鳥ヶ渕に臨む1.6ヘクタールの墓苑で、ここには戦後海外の各地から収集された遺族に引き渡すことのできない戦没者の遺骨約16万7千柱が安置されており、年間の参詣者は15万人に達している。
(3) 温泉
ア 温泉の現状
 昭和46年3月末現在、全国の温泉ゆう出源泉数は1万5,436カ所(うち自噴源泉5,354カ所、動力の装置された源泉7,028カ所、未利用源泉3,054か所)、ゆう出量は1日換算約194万トンに及んでいる。
 温泉法は、これらの温泉を保護し、その適正な利用を図ることを目的としており、温泉を掘さくし、または温泉を公共の浴用または飲用に供しようとする場合には、都道府県知事の許可を受けなければならないこととしている。昭和45年の温泉法による全国の許可件数は、土地掘さく913件、増堀134件、動力の装置702件、浴用または飲用1,522件である。
イ 国民保養温泉地の整備
 温泉地のうち、温泉利用の効果が十分期待でき、かつ健全な保養地として大いに活用される場として温泉法第14条に基づいて環境庁長官が指定した地域を、国民保養温泉地として育成している。昭和47年3月1日現在、第4-2-21表のとおり52か所、6,717ヘクタール(関係市町村60)を指定している。
 国民保養温泉地においては、環境庁長官が温泉利用施設の整備および環境の改善を図るに必要な温泉計画を定め、これに基づく公共施設を整備する場合は、保養温泉地施設整備補助金(補助率3分の1)が交付されることとなっており、昭和46年度においては園地、野営場、駐車場などの施設整備を対象として1,200万円の国庫補助を行なった。


(4) 自然休養林
 近年における国民の自然の山野に対するレクリエーション需要の増大に対処して、国有林野事業の一環として、林業経営との調整を図りながら一定の地域内の国有林野について森林の保健休養機能の積極的発揮を図ることとし、昭和44年度から自然休養林の設置を行なっている。昭和46年度末における設置箇所数は38カ所、総面積は5万800haとなっている。
(5) 少年自然の家
 少年自然の家は、最近の都市化や、工業化の進展により、少年の多くが、自然から隔絶された生活環境におかれている現状にかんがみ、少年を自然に連れ戻し、心身の健全な育成のため、共同生活をさせながら自然探求や、野外活動等を通じて、科学的な観察や豊かな情操を培うとともに、家庭や学校では体験しにくい自律性や、協同、奉仕等の尊さを体験的に学習させることを目的とする少年教育施設である。47年度においては4カ所、46年度においては6カ所設置した。
(6) 青少年旅行村の整備
 近年都市に居住する青少年の生活環境は著しく悪化してきている。明日の日本を担う青少年の健全育成のため、都市の雑踏や騒音から離れた自然の中に健全な観光レクリエーション環境を整備することは、きわめて緊急な課題である。青少年旅行村の構想は、このような要請に応えて青少年の健全な観光旅行の促進を図り、あわせて過疎地域の振興に資するため、一般民家を民宿として利用するなど既存の資源を有効に活用するとともに、戸外レクリエーション施設および公共的環境施設を整備して、公害のない大自然の中における健全にして低廉なレクリエーション活動の受入地を整備しようとするもので、昭和46年度においては、青少年旅行村施設整備費補助金3,960万円をもって、16カ所の地方公共団体に補助金を交付して、青少年旅行村を整備した(第4-2-22表)。

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