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第3節 カドミウムによる健康被害状況

 カドミウムニよる健康被害には、富山県神通川流域に発生したイタイイタイ病がある。
 イタイイタイ病の本感は、カドミウムの慢性中毒により、まず腎臓を障害し、次いで骨軟化症をきたし、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となってイタイイタイ病という疾患を形成したものである。
 慢性中毒の原因物質として患者発生地域を汚染しているカドミウムは、対照河川の河川水およびその流域の水田土壌中に存在するカドミウムの濃度と大差のない程度とみられる自然界に由来するもののほか神通川上流の三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所の事業活動に伴って排出されるもの以外には、見当らない。
 神通川本流水系を汚染したカドミウムを含む重金属類は、過去において長年月にわたり同水系の用水を介して、本症発生地域の水田土壌を汚染し、かつ、恐らく地下水を介して井戸水を汚染していたものとみられる。
 このように過去において長年月にわたって本症発生地域を汚染したカドミウムは、住民に食物や水を介して摂取され、吸収されて、腎臓や骨等の体内臓器にその一部が蓄積され、主として更年期を過ぎた妊娠回数の多い居住歴ほぼ30年程度以上の当地域の婦人を徐々に発病いにたらしめ、十数年にわたる慢性の経過をたどってイタイイタイ病を形成したものと判断される。
 昭和47年3月末までのイタイイタイ病患者の発生状況は、123名で、34名が死亡し、89名が健康被害救済法にもとづく認定患者として医療費等の支給をうけている。
 富山県神通川流域以外の地域においてはイタイイタイ病患者の発生はみられていないが、宮城県鉛川、二迫川流域など7地域をカドミウム汚染による要観察地域として定め、毎年住民の健康調査を実施し、健康被害の未然防止の見地から経過観察を続けている。
 また、一斉総点検の結果、高濃度汚染が疑われた兵庫県生野鉱山周辺地域については兵庫県においてカドミウム汚染にかかる健康調査が行なわれ、生野鉱山周辺地域においてはイタイイタイ病はもとよりイタイイタイ病につながる腎臓障害もないという発表がなされた。
 

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