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第5節 

2 赤潮の発生機構

 赤潮発生のメカニズムについては、昭和42年度から3カ年にわたり、徳山湾をモデルケースとして実施された科学技術庁の「内海水域の赤潮に関する総合研究」の実施およびその後における関係研究機関の研究によりいくつかの知見がえられている。しかし、地理条件の類似する内湾赤潮を海域ごとに比較しても水理条件が異なり、また、赤潮プランクトンはそれぞれ独自の栄養要求と環境要求を持っているので、これらを包括的に説明できる発生要因については、いまだ不明な点が多い。
 これまで得られた発生要因に関するいくつかの知見に基づき、内湾赤潮を主体に検討すると、水温の異なる水の層ができ、上下の混合が悪い状態にあって、かつプランクトンの繁殖に十分な日照と窒素、リン等の栄養塩類の供給があるという基礎的要因のうえに次のような誘発要因が加わって発生するものと考えられる。
 その誘発要因としては、? 降雨、河川水の流入による塩素量の低下に伴う物理的刺激またはプランクトンの物質吸収の増大あるいは河川水の流入による刺激物質の補給、? 海底の貧酸素化による胞子の発芽の促進または刺激物質の溶出と撹拌、? ビタミンB1、B12等のビタミン類、鉄、コバルト、ニッケル等の微量金属類、パルプ廃液、微生物や蛋白質の分解生成の添加等の要因が考えられる。これら要因が自然の状態で満たされる機会は少ないが、人為的汚濁物質が流入する水域においては、絶えず誘発要因が整備されていることとなり、自然的要因が整えば、常に赤潮発生の機会が生ずるものと考えられている(第2-5-2図)。
 このことは、これまで赤潮が、東京湾、伊勢湾等汚濁物質の流入が多い水域および瀬戸内海の主要工業地帯地先海域で頻発し、年々その規模が拡大していることでも類推されるところである。

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