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第4節 

3 下水道の整備

(1) 下水道法の一部改正
 近年の高度経済成長による生産活動および消費活動の発展は水の使用量を増大させ、汚水の発生量も飛躍的に増大させた。これに対し、わが国の下水道整備は著しく立ち遅れていたため、この膨大な汚水を未処理のまま河川等に放流せざるを得ず、水質汚濁による深刻な公害問題を惹起するにいたった。したがって、下水道の役割も単に下水の排除と言うだけにとどまらず、汚水の浄化すなわち公共用水域の水質汚濁防止に資する役割が重要なものとなってきた。換言すれば都市の排水を受けもつ下水道の整備は、に水質公害防止対策として最も効果的、具体的な施策といえる。
 このような諸般の情勢の変化に対処し、円滑な下水道整備を進めるため、昭和45年12月に下水道法の一部が改正され、昭和46年6月から施行された。
 この改正の主要点は、?下水道法の目的として公共用水域の水質保全に資することを明確にしたこと、?流域別下水道整備総合計画に関する規定を新設したこと、?流域下水道の規定を新設したこと、?悪質下水を排出するものに対する届出等の規定を新設したこと、?水質使用料制度を採用できる事を規定したこと等の諸点であり、水質公害防止に対する下水道の役割が強く打ち出されている。さらに必要な政省令および施行通達が整備されて将来の下水道事業の飛躍的伸展に対処し十分な効果をあげ得るよう法制度の充実が図られた。
(2) 流域別下水道整備総合計画
 前述の下水道法の改正において水質汚濁防止の観点からとくに注目すべきものは、同法に定める流域別下水道整備総合計画である。これは、水質環境基準が定められた水域において政令に定める要件に該当するものについて、当該水質環境基準を達成するために都道府県が定める下水道の整備に関する総合的な基本計画である。
 したがって、本計画は個別の下水道事業の上位計画として下水道事業の基本方向を定めるものであり、利水、治水事業等他の関連事業との調整が必要なため都道府県は関係部局及び関係市町村と十分調整し、建設大臣の承認を受けなければならないものとされている。さらに建設大臣はその承認にあたって、環境庁長官に協議しなければならないこととなっている。
 建設省においては、本計画策定の重要性に鑑み、昭和46年度より主要な水域について調査に必要な経費のうち1/3を補助することとしている。昭和46年度においては、調査費126百万円(国費42百万円)をもって、淀川(滋賀県、京都府、大阪府)等9流域について調査を実施した。
(3) 下水道の普及
ア 下水道整備五カ年計画
 昭和46年8月27日、昭和46年度を初年度とする第3次下水道整備五カ年計画が閣議決定された(第2-4-2表)。これは公共用水域の水質汚濁を防止し都市環境を整備するため、昭和46年度から昭和50年度までに総額2兆6,000億円を投資して公共下水道の普及率(排水面積/市街地面積)を22.8%から38%にまで高めようとするものである(第2-4-3表)。
 この五カ年計画では、?水域環境基準達成のための下水道事業、とく特に流域下水道の整備促進、?市街化区域の生活環境の改善のための下水道事業、とくに新市街地における先行的投資、?市街地における浸水、滞水等の防止などを重点に事業を実施することにしている。
イ 昭和46年度の下水道整備事業
 昭和46年度は、第3次下水道整備5カ年計画に基づき、その初年度として当初総投資額2,514億円(国費665億円)で事業を進めたが、その後補正予算が編成されて、これに国土総合開発事業調整費を加え、合計3,739億円(国費983億円)をもって事業が実施された(第2-4-4表)。
 補正後の事業費を事業種別にみると、公共下水道については、3,122億円(国費713億円)をもって全国279都市で事業を実施し、昭和46年度末の普及率は24.9%となっている。流域下水道については継続12カ所のほか、新たに荒川右岸流域下水道等7カ所を加え、合計19カ所において事業を実施した。
 特定公共下水道については、61億円(国費13億円)をもって鹿島特定公共下水道等9カ所において事業を実施した。また、下水道事業を円滑に進めるために、調査費53百万円をもって、?下水処理施設設計の合理化に関する調査、?下水汚泥の処理処分に関する調査、?三次処理に関する調査、?テーパードエアレーションの実用化に関する調査のテーマについての調査を行なった。

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