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第4節 

2 規制措置の強化

(1) 水質汚濁防止法の施行
ア 水質汚濁防止法の施行
 水質汚濁防止法は昭和45年12月25日に制定され、昭和46年6月24日から施行されている。この法律の制定により、わが国の全公共用水域を対象に一律の排水基準が設定され、未汚濁水域についても、事前の予防が期されることとなった。また、水質汚濁の問題は主として地域的な問題であることにかんがみ、それぞれの水域の水質の環境基準値を維持、達成するために、全国一律の排水基準より厳しい上乗せ排水基準の設定等の排水規制に関する権限が都道府県段階に移され、よりきめの細かい水質保全行政が行ない得ることとなった。さらに、排水基準の遵守の強制の方法として、排水基準違反に対する直罰や汚水等の処理方法等の改善命令等が定められている。
(ア) 全国一律の排水基準の設定
 この全国一律の排水基準(以下「一般基準」という。)は、全国の全公共用水域につき適用される排水基準で、工場、事業場に対し少なくともこの程度の基準は遵守すべきであるという最低限度の排水基準である。
 この一般基準は河川、海域等の自浄作用等を考慮して策定されたものであるが、人口が集中した大都市や産業の集中した臨海工業地帯では、この一般基準を遵守させるだけでは水質保全上十分とはいえないので、上乗せ排水基準の設定が必要となる。
 また、一般基準のほかに、現在の汚水処理技術水準では処理が困難な業種等に対しては、とくに5カ年に限って暫定基準を設定している。ただし、人の健康にかかる有害物質については、被害の重大さを考慮して暫定基準は設けていない。
(イ) 規制対象の大幅な拡大
 旧工場排水規制法では規制対象業種は約130業種であったが、水質汚濁防止法では、汚水を排出する工場、事業場をほぼ網羅的にとり込み、約4倍に相当する約520業種を規制対象とし、大幅な拡大を図っている。
(ウ) 上乗せ排水基準の促進
 上乗せ排水基準設定のため、56水域の水質調査および調査済み40水域に対する上乗せ排水基準の設定費の補助を行なった。
(エ) 未規制汚濁源および未規制項目の調査、検討
 未規制汚濁源としては養豚排水について、その汚水処理方法、実態調査を行なった。未規制項目としては、温度、色、PCBについてそれぞれ実態調査を行ない、色、PCBについては分析方法の確立のため調査、研究を実施した。
イ 水質汚濁防止法の施行状況
 特定施設に係る届出状況についてみると、昭和46年末時点で、これら届出を行なった特定事業場数は約10万件で、このうち1日当たりの排出水量50m
3
未満の特定事業場数が約8割を占めている。なお、一日当たりの排出水量50m
3
未満の特定事業場についてはPH、BOD等の生活環境項目に係る排水基準は適用されないこととされている。特定施設の業種別内訳をみると、各都道府県とも先たく業および豆腐または煮豆の製造業がもっとも多く、両者で全体の4〜5割を占めている。そのほか、工業を中心とする県においては、酸・アルカリによる表面処理施設および自動式車両洗浄施設の届出数が多く、農林水産業を中心とする県においては、めん類製造業、畜産食料品製造業および水産食料品製造業の特定施設の届出数が多いことが特徴的である。
 次に、上乗せ基準の設定状況についてみると、旧水質保全法に基づき指定水域に指定されていた水域を中心に水質汚濁防止を早急に図る必要のある水域につき昭和47年1月末現在で神奈川県、千葉県をはじめとする17府県が設定を行なっている。上乗せ基準の基準値については、旧水質保全法時代の水質基準を勘案しているところが多い。
 以上のほか、本法の施行に伴い各都道府県に必置されることとなった都道府県水質審議会の設置状況をみると、ほとんどの都道府県において昭和46年末までには委員の委嘱も終り、実質的な審議を行なっている。また、測定計画の作成についても順調に進んでいる。
(2) 鉱山廃水に対する鉱害の防止
 鉱山および製錬所からの排出水(坑水および廃水)による鉱害については、従来からその未然防止に万全を期するため、人の健康に係る微量重金属等を重点として、坑廃水および水域の水質につき厳しい監督がなされている。
 しかし、近年、カドミウム等の蓄積性を有する重金属による環境汚染、健康被害が社会的に問題となり、これに対処するため、公害諸法の整備が行なわれたことと関連して、鉱山保安法に基づく省令の改正等規制の強化を図った。
 具体的には、鉱山災害および鉱害の防止を基本精神とする鉱山保安法を実施するため、鉱山保安監督局(部)が地方8主要都市に設置され、鉱務監督官によって保安のための監督指導が行なわれてきた。鉱山保安監督局(部)においては鉱山を鉱害発生要因の潜在性の強弱により格付けし、潜在性の強い鉱山には、とくに重点的に監督官と日数を投入し、巡回検査、広域精密検査、追跡検査を定期的に行なってきた。また、カドミウム汚染による社会問題の顕在化を重要視して、昭和45年度にカドミウムに関連する全国65鉱山、31製練所について排出および環境濃度の徹底した一斉点検を実施し、さらに昭和46年度は監督を強化した。
 鉱山においては、鉱業実施中のみならず、休止または廃止した後においても、坑内水、堆積場の浸透水が継続流出する場合が多く、鉱害問題誘発の可能性がある。このため、鉱山保安法に基づいて、従来から休廃止鉱山に対しても検査を実施し、所要の改善策を講じさせてきたところであるが、最近の休廃止鉱山における環境汚染問題の深刻化に対処するため、昭和45年度より「休廃止鉱山周辺重金属鉱害調査」を全国約1,000の鉱山について4カ年計画で開始した。その後、昭和46年度においては、休廃止鉱山調査の結果、鉱害防止対策工事が必要な鉱山でありながら鉱害防止義務者が不存在等の場合に地方公共団体が行なう鉱害防止工事に対して国庫の補助を行なう「休廃止鉱山鉱害対策工事費補助金」制度を発足させた。
 なお、昭和46年に鉱山保安規則を改正し、坑廃水による鉱害防止規制を強化することとした。

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