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第3節 

3 魚業被害

(1) 漁業被害の概況
 水質汚濁による漁業被害は、全国的な範囲にわたり多様な形で発生している。この原因となる水質汚濁の発生源も各種の工場からの排水、都市下水の流入、船舶からの廃油投棄あるいはタンカー等の衝突や座礁事故による油の流出、農薬や家畜ふん尿の流入、廃棄物やし尿の投棄等と多様であるが、公害現象の特徴としてはこれらの多数の原因が複合して被害を発生させるものやヘドロの堆積もしくはビニール等固形物の浮遊または沈積等による長年の継続的かつ集積的な水質汚濁によるものが多く、また、毒物による魚類の大量へい死や油の漂着による沿岸漁場の汚染、のりの被害等突発的な原因によるものも少なくない。
(2) 漁業被害の態様
 水質汚濁による漁業被害の態様としては、? 直接的な操業不能、操業能率低下による漁獲高の減少、? 漁獲または養殖対象生物の減少、? 重金属類の蓄積による商品価値の低下、販売不能、? 着臭、着色、奇形等による漁獲物の商品価値の低下、? 漁船、漁具、養殖施設等の被害、? 汚染の風評等による漁獲物の商品価値の下落、? 汚染された漁場の復旧に要する費用の増大等がある。
 45年度に発生した水質汚濁等による突発的な漁業被害は、都道府県の報告によれば総件数147件、被害額1,505百万円(被害額不明分84件を除く。)であった。これに昭和44年度に都道府県を通じて調査した水質汚濁による継続的被害の額14,581百万円を加えると総被害額は16,086百万円に達し、これに被害額の不明なものが加わるからその額はさらに増加する。

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