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第2節 

4 監視測定体制の整備

 大気汚染問題に対処するためには、大気汚染の状況を的確には握し、ばい煙の排出規制等の基本的施策を推進するとともに、高濃度汚染の発生等異常な事態が生じた場合においては、すみやかに適切な規制措置を講ずることができる体制の整備を図ることが必要である。このため国および地方公共団体においては、監視測定体制の整備を積極的に進めている。
(1) 国設大気汚染測定網
 大気汚染物質のうち、現に規制の対象となっている物質のみならず、他の物質を含めて大気汚染の態様を全国的な視野では握するとともに、環境基準の設定、公害防止計画の策定等に必要な科学的な基礎資料を得る目的をもって、全国の主要地域に国設大気測定局が設置されている。昭和47年4月現在の設置個所は、札幌、仙台、鹿島、市原、東京、川崎、新潟、名古屋、大阪、尼崎、松江、倉敷、宇部、北九州および大牟田の15か所である。この測定局にはいおう酸化物、浮遊ふんじん、窒素酸化物、オキシダント、一酸化炭素、炭化水素等の自動測定記録計および測定データを自動的に記録し集計するためのデータ処理装置が設置されており、このデータをもとに大気汚染要因の解析、究明が行なわれている。
 また自動車排出ガスについても、国設自動車排出ガス測定局が東京都内3か所に設置されており、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、浮遊ふんじん等の自動測定記録計が設定され、自動車排出ガスによる大気汚染の実態解明に必要なデータ収集が行なわれている。
 この測定局は主目的のデータの収集のみならず、各種測定機器の改良開発、あるいは地方公共団体において整備される大気汚染測定網における測定方法の標準化等を進めるために必要な資料を提供しており、大気汚染の防止対策を確立するために多くの役割を有している。
(2) 地方監視測定体制
 地方における大気汚染の監視測定は大気汚染防止法の規定に基づき、都道府県および政令で定められた市等において行なわれている。
 その整備状況は、参考資料第10表のとおりである。
 これらの地方公共団体の大気汚染監視網はそのほとんどが第3-4-3図に示す標準的なテレメーターシステムを導入して整備されており、これによって測定データの収集等は遠隔操作により自動化されている。すなわち、各測定局(モニタリングステーション)に設置されている各種の自動測定記録計は、1時間を単位とする周期をもって当該測定項目にかかる計測が行われており、この1時間ごとの測定値(データ)は、毎時監視センターからの呼出信号によって、自動的に監視センターに伝送される。監視センターにおいては、毎時各測定局からの各種データをデータ処理装置により整理記録し、同時に、大気汚染状況監視盤にその時点の管内全域に亘る汚染状況が明確に表示されるなど、このテレメーター化によって大気汚染の集中的な常時監視が可能となっている。また高濃度汚染が発生した場合における緊急時の措置を適確に講ずるため、押ボタン方式による一斉指令装置をもって関係企業に対する緊急時の際の協力要請、命令の措置の伝達等の各種業務がすべて迅速化され、大気汚染の防止に効果を挙げている。
 また、大気汚染監視網はこれら日々のデータの集積によって、現に設定されている環境基準に対する地域の適合状況の比較検討、あるいは各地域ごとのいおう酸化物の排出基準の設定、有害物質等に係る都道府県の上のせ排出基準の設定等に必要なデータを提供するもので、大気汚染の防止策を確立するためにも多くの役割を有している。
(3) 広域監視測定体制
 首都圏地域、阪神地域等においては、当該地域全般に影響する大気汚染が発生する場合が多く、当該地域の各自治体が個々の判断により管轄行政区域内のみで行なう規制措置を講じても、広域的な防止効果は期待し難い状況にある。このような広域的な汚染を防止するには、関係自治体相互が常時大気汚染に係る情報を交換し、広域圏全域にわたる汚染状況を相互には握し、高濃度汚染が発生した場合における緊急時の措置等を関係都道府県が同時に講ずることが必要である。このためすでに首都圏地域(東京、埼玉、千葉、神奈川)、阪神地域 (大阪、兵庫) においてはテレメーター方式によるこの情報交換システムが整備されており、広域的な大気汚染の防止に成果を挙げている。

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