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第2節 

5 その他の施策

(1) 鉱山における大気汚染防止対策
 鉱山における鉱害の防止については、鉱山保安法に基づき、全国8か所の鉱山保安監督局(部)の鉱務監督管が鉱山労働者に対する危害を防止するとともに、一元的な監督指導を行っている。
 昭和46年においては、検査日数の増加を図るとともに、監督検査用の精密検査機器を整備拡大し、鉱煙の発生源に対する検査のほか広域にわたる環境の精密調査等も実施し、その調査の結果に基づき鉱煙の処理方法の強化等について具体的な監督指導に努めた。
 鉱山から発生するばい煙および粉じんについては、鉱山保安法で規制しており、46年6月に金属鉱山等保安規則の改正を行なって、新たに有害物質の規制を行うこととし、大気汚染防止法と同等またはそれ以上の厳しい排出基準を定めて適用している。
 石炭鉱山および石油鉱山についても、それぞれ保安規則を改正し、金属鉱山とほぼ同様の規制を行なっている。
(2) 電気ガス事業
 電気およびガス事業においては、燃料の低いおう化、煙突の集合化および高層化、高性能集塵器等の設置を推進している。
 また、昭和46年4月、技術基準の改正により火力発電所のボイラーから排出されるいおう酸化物の排出状況を常時監視するため、排出ガス中のいおう酸化物濃度の連続測定を義務づけた。
(3) 低いおう化対策の推進
 通商産業大臣の諮問機関である総合エネルギー調査会低いおう化対策部会のとりまとめた報告書(44年12月)によれば、燃料の低いおう化の目標は、第1-2-6表のとおりである。
 燃料の低いおう化の手段としては、原油の低いおう化、重油脱硫、原油生だき、排煙脱硫等があるが、46年度においては、次のような施策を講じた。
 輸入原油の低いおう化については、46年11月、いおう含有率1%以下の低いおう原油の関税を1klあたり640円を530円に引き下げ、その輸入の促進を図った。
 重油脱硫については、46年度末までに64.9万バーレル/日の処理能力があるが、さらに現在建設中および建設計画中のものを含めると47年度末には68.2万バーレル/日は48年度末には80.2万バーレル/日の処理能力になるものと見込まれている。また、重油脱硫を実施する企業に対しては、従来、原油関税から脱硫重油1klあたり300円に相当する額を軽減してきたが、46年11月からはこれを1klあたり500円に引き上げ、その推進を図った。なお、現在、国の大型プロジェクト制度により、従来の固定床方式にかわる懸だく床方式重油直接脱硫技術の研究開発を進めてきた。
 原油生だきに実施については、電力産業の大気汚染防止対策の進展によって増加しており、46年度には1,200万klに達した。しかし、総合エネルギー調査会の答申で、その量はC重油の輸入予定量(原油生だきへ転換が困難なものを除く)の範囲内と限定されている。
 排煙脱硫については、乾式法の排煙脱硫は、国の大型プロジェクト制度による研究開発を44年度に終了し、電力業界では、この研究成果をもとに実用規模に近い装置の建設を行い、47年中頃までには運転が開始されることになっている。
 湿式法の排煙脱硫は、技術的にほぼ確立しているので、廃液の処理に十分留意しつつ、適当な規模の工場に装置を設置していく必要がある。
 そのほか、低いおう重油の輸入、ナフサ等の軽質油の燃料油としての利用、LNG(液化天然ガス)の導入、都市ガス等による地域暖冷房の実施を促進している。


(4) 地域冷暖房
 熱供給事業は、ボイラーや冷凍機を一カ所に集中設置することにより、公害防止、効率的な熱サービスといった優れた利点をもつことから、昭和45年以前には、僅か6地点において実施または着工されていたに過ぎなかったが、近時急速に普及する傾向を示してきており、50年までには80地点の着工ないし運転が数えられるまでになった。
 通商産業省では、昭和46年9月の総合エネルギー調査会熱供給部会の中間答申をもとに、第68回国会に熱供給事業法(案)を提出した。同法案の骨子は、熱供給を受ける者の利益の保護、熱供給事業の健全な発達および熱供給施設の保安の確保の三つである。
(5) 酸欠空気対策
 最近、東京等の大都市において酸欠空気による住民等の被害が問題となっている。この酸欠空気は、酸素の濃度が18%未満である空気をいう(通常・人間の呼吸する大気中の濃度は、約21%である)。このような酸欠空気を吸入することにより、息苦しさ、頭痛、呼吸数の増加をきたし、さらには意識不明、けいれん、死亡に至るとされている。
 酸欠空気による被害は、従来主として潜函、地下室、井戸等通風不十分な特定の場所における労働作業に伴って発生をみていたが、近時、一般住民にも被害が生じており、問題化してきた。酸欠空気の発生機序は必ずしも明確にはされていないが、一応、地下水の過剰汲み上げ等により含水量の少なくなった砂れき層、第一鉄塩類または第一マンガン塩類等の酸化されやすい物質を含有している地層等が存在する地域またはこれに隣接する地域において、シールド工法、潜函工法等の圧気工法による掘削作業に伴う加圧された空気が前述の地層中へ滲透し、第一鉄塩類等を酸化することによって酸欠空気となり、気圧の変化による影響も加ってこの酸欠空気が井戸、配管、壁面の割れ目等を伝って周辺地域の地下室、トンネル、井戸等に漏出充満することによって住民に被害が生ずるものである。
 酸欠空気による労働者の被害の防止については、昭和46年9月、労働基準法に基づいて酸素欠乏症防止規則が制定され、対策が講じられることとなった。これらの対策は、一般住民の被害の防止と密接な関連を有するものであるので、環境庁は同年12月大気保全局長通知をもって都道府県知事に対し、酸欠空気による住民の被害の防止のため、必要な対策の確立方を通知するとともに、酸欠空気の発生機序について調査研究をすすめている。
(6) ボイラーによる大気汚染防止対策
 労働省は、46年5月「ボイラおよび圧力容器安全規制」の一部改正を行ない、ボイラの排ガスを監視する措置、ボイラ取扱主任者による燃焼状態の監視及びばい煙の測定、燃焼装置の月例点検などの対策を新たに進めることとし、大気汚染防止に寄与することとした。

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