前のページ 次のページ

第2節 

3 自動車排出ガス対策の推進

(1) 自動車排出ガスの排出規制
 自動車から排出される有害な物質(大気汚染防止法においては、これを「自動車排出ガス」と称している。)の排出規制は、環境庁長官が大気汚染防止法の規定に基づき自動車排出ガスの量の許容限度を定め、運輸大臣が道路運送車両法の規定に基づく道路運送車両の保安基準によってこの許容限度が確保されるよう自動車の構造、装置について具体的に規制することにより行なわれている。
ア 自動車排出ガスの範囲の拡大
 自動車排出ガスとしては当初一酸化炭素のみが定められていたが、大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行に伴い、昭和46年6月新たに、炭化水素、窒素酸化物および鉛化合物を追加した。
 さらに、自動車から排出される粒子状物質(ジーゼル黒煙等)による生活環境の汚染の防止を図るため、47年3月自動車排出ガスとして粒子状物質を追加した。なお、これに伴い粒子状物質の大半を排出する軽油を燃料とする自動車(ジーゼル車)を自動車排出ガスの排出規制の対象とする自動車として追加指定した。
イ 自動車排出ガスの許容限度の強化
 自動車排出ガスの許容限度および道路運送車両の保安基準については、逐次改正強化を図っているが、その推移は第1-2-3表のとおりである。
 なお、最近における自動車排出ガスの許容限度の強化としては、47年3月、自動車排出ガスの許容限度の改正を行なった。その内容は、?使用過程車の一酸化炭素のアイドリング時における排出濃度を5.5%から4.5%に強化するとともに、?光化学スモッグ対策の一環として、その原因物質の一つである炭化水素の排出規制の強化を図るため、新たに燃料系統から蒸発ガスとして大気中に逸散する炭化水素を一走行当たり2g以下に定めた。また、?粒子状物質の規制対策として、ジーゼル黒煙を日本工業規格D8004に定める測定法によるろ紙の汚染度50%以下に定めた。この改正に対応して、道路運送車両の保安基準も47年3月に改正された。
ウ その他
 自動車の安全性の確保および公害防止の見地から道路運送車両により定期点検整備を自動車の使用者に対して義務づけているが、これに基づいて、自動車排出ガス減少対策に効果のある18項目の箇所について6ヶ月ごと等の定期的な点検整備を義務づけている。定期点検整備の効果に関する調査結果は第1-2-1図に示すとおりであり、その必要性が確認されている。 


(2) 交通規制等による自動車排出ガス対策
 
 交差点等自動車交通量の多い道路の周辺においては、自動車排出ガスの排出規制および関係行政機関に対する都道府県知事の道路構造の改善等に関する意見のみでは必ずしも有効に大気汚染を防止し得ない場合があるので、自動車の交通規制その他の環境汚染対策が必要である。このため先の大気汚染防止法の改正により、自動車排出ガスによる一定の大気汚染が生じた場合には、都道府県知事による運転者等への協力要請および都道府県公安委員会に対する交通規制の要請によって所要の対策が講ぜられることとなっている。
 これらこ措置を適正かつ円滑に実施するため、昨年6月に第1-2-4表のような要請の基準を定めた。
 なお、これらの措置を定めた大気汚染防止法の改正と対応して、道路交通法の改正が行なわれたが、さらに、第65国会において、道路交通法の装置不良車両に関する規制の改正が行なわれ、ばい煙等の発散防止装置が道路運送車両法またはこれに基づく命令に定めるところに適合しない車両は直ちに整備不良車両とされるとともに、これらの装置不良の車両に対する罰則が強化された。


(3) 鉛化合物の規制
 自動車の燃料であるガソリン中には、オクタン価を高めるために、一般に4-アルキル鉛が添加されている。この鉛がガソリンの燃焼後排出されて、人体に影響を及ぼすとも考えられること、排出ガス中の一酸化炭素、炭化水素等の量を減少させるための触媒式排出ガス清浄装置の触媒に悪影響を及ぼし、その浄化機能を阻害することから、自動車排出ガスとして規制できることとしたほか、昭和46年3月に毒物および劇物取締法施行令の改正を行ない、加鉛量を1.3cc/l(4.8cc/gal)から0.3cc/l(1.1cc/gal)に引き下げた。
 これにより第1-2-5表にしすように昭和44年度における4-アルキル鉛の添加量は、全国平均で、ハイオクタンガソリン2.0cc/gal、レギュラーガソリン1.0cc/galであったが、昭和46年度では、添加量は0.8cc/gal、0.5cc/galと見込まれている。
 また、産業構造審議会は、昭和49年4月から無鉛化ガソリンを供給する旨の答申を出したが、ガソリンの無鉛化に伴い、既販売車については、バルブシートリセッション(潤滑材としての働きをする鉛がなくなることにより、バルブシート(弁座)のバブル(弁)との接触面が著しく磨耗し、バルブを突き上げることをいう。)が生じ、エンジンの寿命が著しく短縮するのみならず、排出ガス中の炭化水素等の増加、さらには走行性の悪化等の新たな問題が生ずる可能性が考えられるため、その対策の研究が進められている。

前のページ 次のページ