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第3節 

2 自動車による環境汚染

 わが国におけるモータリゼーションの進展はいちじるしい。昭和30年には約150万台だったわが国の自動車保有台数は、45年には約1,900万台にもなり、乗用者の普及率も22.1%(46年3月現在)となった。自動車は現代文明の一つの象徴であり、その保有は生活の豊かさを示す一つの指標でもあった。
 自動車がもっている移動の任意性、快適性、スピード性等の機能は人間生活に多くの便益を提供してきたといえるが、その反面では交通事故の増大等にみられるような不利益を社会全体にもたらしてきた。自動車によってもたらされる環境の汚染もそうした社会的不利益の一つである。
 第1に、自動車は走れば必ず排出ガスによって大気を汚染するという意味で、環境資源多消費型の商品であるということができる。排出ガス中には一酸化炭素、窒素酸化物、鉛化合物、炭化水素等の汚染物質が含まれている。厚生省の試算によれば、都内での石油燃料の使用によって、42年には、一酸化炭素87万トン、窒素酸化物6万トン、炭化水素18万トン、いおう酸化物1万トンが空中に排出されたが、自動車から排出されたものは、それぞれ99.7%、35.9%、97.9%、1.0%を占めるものとみられている。
 また、45年の夏以来各地でひんぱんに発生するようになった光化学スモッグについても、自動車排出ガス中の窒素酸化物や炭化水素もその一因となっているものとみられている。
 第2に、自動車は騒音、振動の発生源でもある。騒音、振動は、日常生活において最も身近に感じられている公害の一つである。地方公共体団に対する苦情の内訳をみても、公害の中では騒音、振動に関するものが最も多い。
 自動車の走行に伴う騒音には、エンジンの音、排気音、走行中のタイヤの音、クラクションなどがある。自動車は鉄道、飛行機などと違ってどこにでも入り込めるため、その影響範囲が広いことがその特徴である。
 排出ガス、騒音等の公害の程度は、被害を受ける人々が道路の付近に集中しているかどうかによって異なる。わが国の都市集中、過密がこういった公害をより大きな問題にしているといえよう。
 第3に、廃車の処分があげられよう。
 乗用車について保有台数の増加分と新しく登録された台数の差を廃車台数とみなして主要国の廃車率(廃車台数/新規登録台数)の推移をみると、アメリカは1960年にはすでにかなり高い水準に到達しており、西欧先進国では次第に高まってきている(第2-3-1表)。わが国はまだ普及途上にあるため、水準はまだ低いが、60年以降急速な高まりをみせており、廃車の処分が大きな問題となってきている。
 海外主要諸国について国内向出荷台数と保有台数から廃棄台数を推計すると、アメリカがずば抜けて大きく、わが国はまだ西ドイツの1963年頃の水準であるが(第2-3-6図)、アメリカ、西ドイツのその後の推移を見れば、わが国の今後の方向を読みとれるであろう。

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