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第1節 

3 公害防止協定

 地方公共団体と企業の間で、公害の防止等を目的として締結される公害防止協定は、未然防止対策の有効な手段として各地に拡大している。
 45年7月15日現在、公害防止協定を締結している地方公共団体は、27都道府県、79市町村(指定都市を含む。)、計106団体で、相手方企業は496企業に及んでおり、昨年同期に比べ地方公共団体数で13県34市町村、計47団体、相手方企業数で295企業(対前年比2.46倍)の増加をみせている(第3-16-2表参照)。
 なお、45年7月15日以降12月までに、新たに公害防止協定を締結した地方公共団体は24団体、相手方企業は78である。したがって45年12月現在、公害防止協定を締結している地方公共団体は、30都道府県、100市町村、相手方企業は574となっている。
 公害防止協定の相手方企業の業種別内訳では、石油化学製品製造以外の化学製造業139、鉄鋼・金属製品製造業88、電気・ガス事業43、石油化学製品製造業41、紙・パルプ製品製造業33が目だっており、化学、鉄鋼・金属、電気・ガス、紙・パルプの4業種で344と全体の約7割が占められている(第3-16-3表参照)。
 公害防止協定の内容は、大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭等の公害全般にわたりその防止対策を規定し、企業の責務の内容を厳密に規定する傾向にあり、とくに大気汚染防止対策では、燃料規制を規定することが一般化しつつある。
 公害防止協定には、地方公共団体と企業との間で結ぶ協定のほか、住民と企業とが締結する住民公害防止協定、公害防止対策に関する地方公共団体間の協力協定等があるが、前者の代表的な例としては、45年6月4日、いわき市の小名浜地区公害対策連合委員会と日本水素工業小名浜工場との間で締結された協定があり、後者の例としては、千葉県松戸市と市川市の間で締結された「公害防除協定」や兵庫県と姫路市との間で締結された「協定書」がある。
 公害防止協定は、この1年間で、過去17年間に締結された協定数を上回る実勢を示しているが、この背景には、地方公共団体が未然防止に重点を置いた公害防止対策を進めようとする姿勢がうかがえる。
 最近における公害防止協定の例として、たとえば神奈川県・横浜市・川崎市と日本鋼管の協定では、大気汚染防止対策として、いおう酸化物の着地濃度を複合着地濃度で0.015ppm(将来は0.12ppm)、千葉県と川崎製鉄の協定では0.019ppm、和歌山県・和歌山市と住友金属の協定では0.012ppm(昭和50年)としており、国の排出基準より厳しい規制が盛り込まれてきている。

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