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第1節 

4 紛争処理の手続き

(1) 申請
 申請は、所要の申請手数料をそえて、所定の事項を記載した申請書により行なうものとされている。申請は、和解の仲介、調停については、紛争当事者の一方のみからでもできるが、仲裁については紛争当事者双方の合意に基づいて行なうことが必要である。
(2) 審理
ア 和解の仲介
 3人の和解の仲介委員が当事者の意見を聞き取りそのあっせんを図る和解の仲介は、本来調停、仲裁に比較して、紛争を機動的かつ簡便に解決しようとする点に特色がある。紛争解決への関与の度合いが比較的弱いこともあって、和解の仲介委員には、事実の調査等に必要な強制権限は付与されていないが必要があれば関係行政機関の長から資料の提出を求めることができる。
イ 調停
 3人の調停委員から構成される合議制の調停委員会は、当事者に出頭を求めて意見を聞き、参考人の供述、鑑定人の鑑定を求めるなどして自ら積極的な事実を調査し、これらの結果に基づき調停案を作成して、当事者に提示し、その受諾を勧告する。調停委員会は、当事者の出頭を求めてその意見を聴取する権限(出頭命令権)を有しており、このほか中央委員会に設けられる調停委員会には特に一定の場合に文書等の提出命令、工場等への立入検査の権限も与えられている。
ウ 仲裁
 当事者の選定した3人の仲裁委員が仲裁委員会を構成する。仲裁委員3人のうち少なくとも1人は弁護士の資格を有する者でなければならない。仲裁委員会は当事者の審訊を行ない参考人、鑑定人の尋問を行なうなどして事実の調査を行なって仲裁判断を作成する。仲裁委員会は、中央、地方を問わず文書等の提出命令、工場等への立入検査の権限が与えられている。
 なお、調停および仲裁の手続は、その本来の性格、当事者等の秘密の保護、手続を円滑に進めることの必要性にかんがみ、非公開とされている。
(3) 申請手数料等手続に要する費用
 調停または仲裁を申請する者は、所定の申請手数料を納付しなければならないが、国および都道府県いずれにおいても、その金額を他の制度に比較して低額にしており、(たとえば調停の場合には、民事訴訟のほぼ八分の一、民事調停のほぼ四分の一程度となっている)。さらに、申請手数料の納付が困難な者に対しては、申請手数料を減免し、またはその納付を猶予することとしている。
 紛争処理の手続に要する費用については、とくに当事者の負担を極力軽減するものとしてその大部分を国または都道府県が負担することとしており、当事者は、申請手数料等の申請に要する費用、出頭に要する費用、代理人を依頼した場合の代理人に要する費用等のみを負担すればよいことになっている。

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