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第1節 

3 紛争処理を行なう専門機関

 国には、総理府の機関として中央公害審査委員会(中央委員会)が設置されている。中央委員会は、委員長および委員5人で組織される合議制機関である。中央委員会は、公害紛争の調停および仲裁を行なうという準司法的機能を有することから、とくにその独立性、中立性の確保が図られている。すなわち、中央委員会は内閣総理大臣の所轄の下に置かれ、委員長および委員は独立してその職権を行使でき、その任免には国会の同意を要することとされている。なお、中央委員会には、事務局が附置され、事務局長以下21人の職員が配置されている。
 都道府県には、条例で都道府県公害審査会(審査会)が置かれるのが原則であるが、この審査会を置かない都道府県にあっては、知事が公害審査委員候補者を委嘱してその名簿を作成し、申請に応じてこの候補者のうちから委員を指名していつでも紛争処理を行なう体制(いわゆる「名簿方式」)をとることになっている。どちらの方式をとるかは都道府県が、その実情に応じ、自主的に判断することになっているが、昭和45年度においては第2部第2-8-6表のとおり東京都、北海道、大阪府、神奈川県等32都道府県において公害審査会が設置され、京都府、長野県等、14府県においては、「名簿方式」がとられている。
 審査会は、議会の同意を得て任命される非常勤の委員9人以上15人以内で組織され、「名簿方式」においては、毎年9人以上15人以内の公害審査委員候補者が委託され、公害審査委員候補者名簿が作成される。
 中央委員会と審査会等との関係は、いわゆる二審制的性格のものではなく、それぞれが法の定めるところに従い紛争処理を行なうこととされている。
(1) 中央委員会は、次に掲げる紛争について調停、仲裁を行なう。
ア 重大事件
(ア) 人の健康被害に関する紛争であって、大気の汚染、水質の汚濁による慢性気管支炎、イタイイタイ病、水俣病等に起因して、人が死亡し、又は日常生活に介護を要する程度の身体上の障害が人に生じた場合の当該公害に係るもの
(イ) 大気の汚染、水質の汚濁による動植物に係る被害に関する紛争であって、申請に係る当該被害の総額が一億円以上であるもの
イ 広域処理事件
(ア) 航空機の航行に伴う騒音に係る紛争
(イ) 新幹線列車の走行に伴う騒音に係る紛争
ウ 広域事件
 公害のいわゆる加害地、被害地が2以上の都道府県にわたる場合の紛争
(2) 都道府県の公害審査会等は、上記の紛争以外の紛争について和解の仲介、調停および仲裁を行なう
(3) ただし、広域事件については、関係都道府県が共同して連合公害審査会を設置した場合は、その連合審査会が和解の仲介および調停を行なうこととしている。
(4) なお、仲裁については、事件のいかんにかかわらず当事者双方の合意により、中央委員会、都道府県の公害審査会等のいずれかに仲裁を求めることができる。

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