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第6節 

2 健康項目に係る水質調査

(1) 公共用水域
 水質汚濁に係る環境基準の設定に伴い、人の健康の保護に係る項目については、水質保全法の既指定水域につき、昭和45年8月1日にいっせいに水質基準を設定し、排水規制を行なうこととした。このため、これらの水域について、健康項目に係る水質基準の遵守状況をは握するため、緊急に調査を行なうことが必要になった。
 また、指定水域以外の水域についても、環境基準の設定に伴い、健康項目に係る水質の状況を調査することが必要になった。そこで、水質保全法の指定水域52および同法の調査基本計画に掲げられた水域であって、すでに指定調査または基準調査を終えた57水域につき1に述べた指定水域における水質の測定との調整を図りつつ、健康項目に係る総点検調査を実施した。なお、この調査は、1の調査と同様、経済企画庁が都道府県に委託して実施した。
(2) 工場排水
 健康項目に係る工場排水については、45年度から、通商産業省において、健康項目に係る排水を排出するおそれのある工場の実態調査を実施し、排水の実態、排水処理、工程管理等の実態をは握し、改善指導を行なっている。
 45年度においては、シアン・クロムを扱う電気メッキ工場(700工場)およびカドミウム使用工場(330工場)について調査を実施するほか、環境基準の設定に伴う緊急調査として、水銀関係工場(塩ビ電解か性ソーダ工場を除く。)(120工場)、ひ素関係工場(80工場)、鉛関係工場(300工場)およびシアン・クロム関係工場(300工場)について、実態調査を実施した。調査結果が得られたものについては、基準をこえている工場に対し、所要の改善指導措置を講じた。
 たとえばいっせい点検に基づくカドミウムによる環境汚染防止対策としては、立入検査の段階で管理状況のずさんなものに対してはその整備を指導するとともに、分析結果が0.1ppmをこえているものについては、関係都道府県に連絡して早急に改善指導、改善命令およびアフターケアーなどを強力に行なうよう指示し、あわせて当該企業に対しても分析値を示し改善方を指示した。
 以上の指示連絡を受けて関係都道府県は基準以上の工場の改善指導を実施するとともに引き続きアフターケアー調査を実施している。
 また、水質保全法の規制対象外の工場については都道府県に早急に条例等を整備して、これにより規制するよう指示している。
 一方、カドミウムを使用するメッキ工業、化学工業、機械、電気工業等に対しては、それぞれの連合会、工業会、協会等に対してさん下の各企業の対策、改善等を推進するよう通達を出し、これによりたとえばメッキ工業等ではカドミウムメッキを中止して亜鉛、スズ、ニッケルなどのメッキに転換したり大企業からの下請の中小企業については下請を中止して大企業内部でメッキなども行なうようにしている。
 また今回の点検によりとくに中小企業で基準以上のものが多数あることが判明したので、中小企業金融公庫、国民金融公庫等に対して、これら中小企業の設備設置に十分の配慮を払うよう要請した。さらに以上の対策と並行して、工業技術院の各種試験場でカドミウムなどの処理技術を開発し、これを鋭意啓蒙普及させていくようにしている。

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